若肉老食時代に終止符を 『若者殺しの時代』 堀井憲一郎

 おもしろい。1983年から1999年までの世相を見事に言い表している。しかも文体がやや話し言葉的に書かれていて心地よい感覚がある。まさに自分が生きてきた時代感覚が重なる。1955年から1965年に生まれた人には大いに共感できる口調だ。  しかし、本来の対象読者は1970年前後に生まれた人々だとおもう。たぶん、ロストジェネレーションと呼ばれる世代への呼びかけだ。その呼びかけを受けて、赤木智弘氏が『若者を見殺しにする国』を書いている。そもそも私がこの本を読むきっかけとなったのは...

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医療ウォーズ・帝国の逆襲 『破裂』 久坂部羊著

〓 現代日本のタブーをあからさまに  『楢山節考』そして『蟹工船』。どちらも4年ほど前にちょっとしたブームになったのを覚えているだろうか。社会が暗くなるのを見透かすように、どちらも日常にある闇の世界にスポットを当てたような小説だった。この二つに共通するのは、どちらの小説も人間の尊厳について触れていることだと思う。前者は生と死の間にある尊厳、そして後者は生と貧困の間にある尊厳だ。  今回読んだ小説も、全体のストーリを覆っている薄い膜は「人間の尊厳」である。それは医師と患者の間に...

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不気味な谷間 『廃用身』 久坂部羊著

 ロボット工学には「不気味の谷」という言葉がある。つまりこれは、ロボットがより人間に近くなり、見分けがつかなくなる直前のちょっとした不自然な挙動が、かえって人々に不気味を感じさせる現象のことを言う。確かにASIMOのような完全なロボットは動作が多少不自然でも不気味には感じない。しかし、大阪大学の石黒研究室などで開発されるアンドロイドでは、見た目が人間に近いだけに、動作が少し不自然なだけで不気味に感じるのだ。石黒教授もその辺は良くわかっていて、人間により近い動作になるように苦心...

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死に時をわきまえよう 『日本人の死に時』 久坂部羊著

〓 本当の死はもっと身近にあるもの  私たちの周りには死の影が常につきまとっていす。それを身近に感じないのは錯覚にすぎません。死は生の対極にあるのではなく、その一部として存在しているのです。あなたが、そして私が明日も生きている保証などどこにもありません。そして、高齢になったときは、死は確実に現実に近づきます。長生きしたい、あるいは長生きして欲しいという思いは、いつかは裏切られることを前提としているのです。  過度に長生きをしたい、という思いは人間の欲望の現れです。際限のない金...

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作家である妻からみた、作家であり続けた夫の最後 『紅梅』 津村節子著

 稀代の作家、吉村昭氏が死去したのは2006年7月である。氏が2005年に舌癌と宣告され、その死に至るまでの姿を、その妻である津村節子が綴っている。作家である妻からみた、作家であり続けた夫の最後。  私が吉村氏の小説を初めて読んだのは『間宮林蔵』だった。その後『武蔵』『熊嵐』と読んだが、著者が自らの足で取材して得た事実をつないで書く作風が、私には心地よかった。いずれの小説も緻密で、ほとんどノンフィクションのようなのである。おそらく司馬遼太郎が好きな読者は、吉村氏の作風が気に入...

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天災は忘れた頃とか、つまり人類とは無関係にやってくる 『関東大震災』 吉村昭著

 吉村昭が書く小説には事実が詰まっている。貴重な文献である。  中でもこの『関東大震災』は『三陸海岸大津波』に並んで特に貴重だ。1923年のその時、関東で、そして日本で何が起きていたのか、これ程詳細にそして判りやすく記された文献は外にないだろうと思う。  この本は、大きく分けると次の三つで構成されている。 1.震災が起きたときの様子 2.火災の発生とその原因 3.根拠のない流言と人々の行動  そしてこの事実の展開を、地震学者、今村氏と大森氏の、地震発生前と発生後の対処で挟み込...

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あたりまえでしょ、あんた書評家なんだから 『それでも、読書をやめない理由』 デヴィッド・L・ユーリン著

 いきなりブログ記事タイトルで、クソ偉そうなことを書いてごめんなさい、ユーリンさん。でも、どう考えたって、それ以外に理由が見当たらない。文芸評論家や書評家が読書をやめる理由ってあるんですか?  と、まあこんな突込みを入れることができるのも、私がプロの書評家ではないから。なんなら「それでも、書評ブログをやめない理由」というタイトルで本を出版してもいい。そのときは正直に、書きますよ。他にやることがないからだって。  でも、私が怒っているのは、著者に対してではない。邦題をつけた出版...

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科学的空想と現実的検証の世界 『虐殺器官』 伊藤計劃

 SFはサイエンスフィクション。近未来小説やファンタジーも含む小説の一大分野だ。当然、池井戸潤が書く「社会派小説」や、角田光代が書く「家族主義小説」とは、小説の読み方が異なる。「社会派小説」は批判的に、「家族主義小説」は共感的に、そして「SF小説」は科学的に読むのがいい。  科学的に読むとはどういうことか。つねにそれと現実を照らし合わせて、ありうるかどうかを検証しながら読むということ。たとえば、この小説でも冒頭には航空機からポッドと呼ばれる棺おけのような装置に乗って、戦闘員が...

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アイフォニア(iPhoner)には、これがいい!:その43[Enigmo 2]

〓 三次元の物理法則に従え  以前もはまったEnigmoですが、このゴールデンウィーク中の時間つぶしのためにちょっと手を出してみました。Enigmo2、面白い。いわずと知れた(と思わるる)、重力系ゲームの真髄。ツボからぽたぽたと落ちる水滴を、その水滴を跳ね返す太鼓などを使って、うまくツボに入れる重力パズルゲームです。まあ私のツボにもうまくはまったわけです。  そしてその第2弾、Enigmo2は、三次元になって操作性が悪くなったという感想もあるようですが、アンドゥーボタンとグリ...

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日本の伝統柄 『ブックカバーと筆ペン』 を購入

 この辺りには、桜井、尾崎、本橋といった、江戸時代から由来の人々が多く住んでいる。彼らは、いわゆる一族であるらしい。つまり上石神井や石神井台を中心とするこの一帯は、彼らの持ちものであったということだ。  そんな一角に、オザキフラワーパークというガーデニング専用店がある。規模はそこそこ大きい。かつては、植物、腐葉土、農具など、ガーデニングというよりは家庭菜園的なイメージの店だったのだが、10年程前に1階に食品スーパーのサミットが入ってから品揃えが洗練されてきた。  おそらく尾崎...

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«夏の思い出とミステリー 『ひそやかな花園』 角田光代著