「項羽と劉邦」再び
世の中不思議のなもので、昨日までは人間が食うものではない、と思っていた食い物が、急においしく感じることがある。
私は、かねてから”歴史”というものに意義を見出せずに、「温故知新」を「うんこ恥身」などと、心の中でなじって楽しんでいた。高校生のころは、年譜や人名を覚えることは”畳の上の水練”と同じだと思っていた。(理系型人間が、歴史を嫌うのは、畑村洋太郎の「わかる技術」にも書いてある)。だからこそ、人生今になって、歴史が面白い。
といっても、教科書の歴史はやはり面白いものではない。歴史そのものが面白いのではなく、登場する人物が面白いのである。そして、司馬遼太郎が、その人物を画くと、まるで色付いた紙芝居のように、とたんに面白くなる。
「項羽と劉邦」は、私をそんな世界に導いてくれたきっかけの書なのだ。しかし、不思議なことに、この本がいつから我が家にあるかは誰も知らないらしい。家内に聞いたが、買った覚えは無いという。明らかに古本であり、しかも上中下の下巻だけが無い。1980年出版の本であるが、これは歴史の神のいたずらであろうか。
最初に「項羽と劉邦」を読んだのは、確か3年前である。中国の歴史とはこれほど面白いものかと関心して、すぐさま吉川栄治の「三国志」を読む。これが失敗であった。あまりに戯曲的過ぎて、どうしてもなじめない。おそらく私は池上正太郎の小説も好きにはなれないであろうと思う。(つまり、イケショウはまだ読んだことが無い)
その後、シバリョウの「坂の上の雲」やら「燃えよ剣」と読み進むうちに、シバリョウの絶大なるファンとなるのであった。いまさらながらに歴史は面白い、と思う。
シバリョウの中でも、「項羽と劉邦」は特に面白い。いま上巻を読み終え、四面楚歌まで3合目を過ぎた。
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