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「プルーストとイカ」メアリアン・ウルフ著

 「プルーストとイカ」、いったい何のことだろう。
 副題は「読書は脳をどのように変えるのか?」という。
 「読字障害」という言葉を聞いたことはあるだろうか。昨年の10月12日、NHKスペシャル「病の起源」で取り上げられて、私は読字障害という言葉をはじめて聞いた。英語ではディスレクシア(Dyslexia)という。この障害を持つものは、文章を読むのが極端に遅い、或いは流暢な音読が出来ないのだ。この本では、第3章でディスレクシアについて述べている。驚いたことに、エジソン、アインシュタイン、などもディスレクシアだったといわれている。著名人の中にはディスレクシアが多数存在する。ディスレクシアは右脳を活用することによる特殊な能力を持っている場合が多いらしい。
 この本は3つの構成に分けられている。

Ⅰ.脳はどのようにして読み方を学んだか?

人が言葉を使うようになってから文字を発明するまでと、文字が統合されギリシャに普及するるまでを解説する。ソクラテスが書記と読字について問題提起する場面を載せているが、この史実は後の複線となる。また、英語、中国語、日本語を読む場合の、脳のそれぞれの使われ方の特徴が図入りで説明されている。

Ⅱ.脳は成長につれてどのように読み方を学ぶか?

読字は遺伝子に組み込まれたプロセスではない。人が生まれてから文字を読むというリテラシーを獲得するまでのプロセスを説明する。子供をひざに乗せて絵本を読み聞かせるというのは、人がリテラシーを獲得するために非常に重要らしい。

Ⅲ.脳が読み方を学習できない場合?

なぜディスレクシアが発生するか、まだ調査中であり、遺伝子レベルでの解明はなされていない。現在までに判っていることが記載されている。ディスレクシアの原因自体が一通りでなく多様であるが、特に多いのは通常は左脳の優位性が阻害されていることらしい。それが原因で右脳で言語処理をすることになる。しかし、右脳優位性のために左脳が言語処理に使われなくなったという可能性も否定できないでいる。

 最近は、脳科学の発達によりいろいろなことが分かってきた。近い領域だと「脳の中の幽霊」(V.S. ラマチャンドラン著)や、新たな角度から見た人類史である「この6つのおかげでヒトは進化した」(チップ・ウォルター著)等を、楽しく読んだ方にはお勧めの書。

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コメント

その後、サイエンス・サイトークというPodCastで聞いた話。登場人物は、小説家の森博嗣さん。この人も自ら自分がディスレクシアだったことを明かしている。しかし、森氏は原稿を1時間に6千字も書くそうだ。もちろん手書きではなくPCで。なぜそんなに速く書けるのか?という質問に対して、「映像を言葉に置き換える時は、そのくらい速く書かないと追いつかない」ということらしい。つまり、ストーリーがイメージとして頭に浮かんで、それを文字に置き換えているだけ。いやはや、ディスレクシアは天才であることの代償なのかもしれない。

投稿: 本人 | 2009年5月 9日 (土) 05時12分

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