「3年で辞めた若者はどこへ行ったのか―アウトサイダーの時代 (ちくま新書)」城 繁幸
〓 格差問題の本質がここにあると思う 〓
「なぜ若者は3年で辞めるのか」という、同著者が以前書いた本については、既に多くの方がAmazonなどに書評を寄せている。その書評を読むと分かる通り、この本に対する意見はその年代により大きく違っている様だ。おそらく、35歳前後の年代がこの論に賛同し、50代以上では反対意見を述べているのではないか。ただ、書評をネット上に載せているのはその殆どが35歳前後もしくはそれよりも下の世代のような気がする。
私は「なぜ若者は3年で辞めるのか」を読んだ直後に、ぜひこの本書の書評をブログに載せたいと考えた。が、考えすぎてキーボードに乗せた手が動かず、ついに今日に至ってしまった。意見をひねりだすのが難しいというのではない。意見がありすぎて、纏まらなくなってしまったのだ。それほどこの本については衝撃を受けたし、私自身の今の生活のあり方や会社、あるいは社会のあり方に対してまでも、考えをめぐらすことができた。
この本「3年で辞めた・・・」も含めて、特に「若者はなぜ3年で・・・」は、何時の日か見直され、ロングセラーになる日も来るのではないかとさえ思う。なぜなら、この本が述べているのは今は現実問題だから。なぜなら、上位の年代層に対しては不都合な現実であるために、現在は覆い隠されている問題を含んでいるから。そして、上位の年代層が引退し、やがて現在の35歳が政治の主役となったときは、おそらくこの問題は解決されているのだろうと思う。
私自身の年齢を明かすと、若者(35歳)と老人(60歳)のちょうど中間の世代になる。まさに年功序列というレールが途中で切れた世代。先輩たちは年功序列でヒエラルキーの山を登りきり、後輩たちは成果主義で突き進む。おそらく、私と同世代の人々は、若い頃に思っていた約束の地が、いつのまにか定員オーバーになっていることに気づき愕然としただろう。私自身は、なんとなくこれ以上は給料が増えないのではないか、といぶかしげに思い、まさにその通りとなった。そして現実となった今、さらに大きな不安を抱えることになった。私たちの世代が、まさに世代間格差を形作る境界線上にいる。国民年金制度が拠出型としていまの制度になったその日以後に私は生まれた。そのため、私は65歳年金支給を日本で最初に受ける最も年長の人となる。
この、城繁幸氏の提唱する世代間格差の問題は、個人と社会に通じる大きな問題だと思う。そこで、しばらくは「世代間格差」このブログのテーマにするとして、ひとまずこの本の書評としては終了したい。
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コメント
7月26日(日)、今日のサンデープロジェクトに城さんが出演していた。「正規VS非正規、格差をなくすには?」6党大激論!なのだが、6党とも議論が浅い。そこで、次のコーナーへの出演を待っていた城さんがよこから正論をドーンと出して、スタジオにはしばらく静寂が・・・。城繁幸、若いが切れる・・・。でも面目をつぶした辻本さんが本当にキレていた。
投稿: | 2009年7月26日 (日) 17時49分