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「リストラなしの「年輪経営」」: 塚越寛

   〓 読む人々によい影響を与える、良書だと思う 〓

 本を手にして、ページを開く。まず最初に思ったのは、「文字がでかい」。これは、著者の読者への配慮なのだろうか。読んでいるうちに、この大き目の文字が結構読みやすいことに気づいた。
 著者が貫いているのは、社員の幸せを中心に経営を進めるということ。そして、成長よりも持続性を重視すること。年輪経営という言葉は、枝葉を大きくしすぎず、幹とのバランスよく成長する、環境が悪化しても少なからず成長する、ということだ。たしかに、急激に生長する樹木は幹が弱いだけに長く成長することは難しい。会社も同様だ、ということだろか。

 以下には、印象に残った一説を紹介する。
 まず、著者が経営戦略の柱とする、二宮尊徳の言葉が、23ページに掲載されている。読めば理解できると思われるので、コメントはしないことにする。

遠きをはかる者は富み
近くをはかる者は貧す
それ遠きをはかる者は百年のために
杉苗を植う
まして春まきて秋実るものにおいてをや
故に富有り
近くをはかる者は
春植えて秋実る物をも尚遠しとして植えず
ただ眼前の利に迷うてまかずして取り
植えずして刈り取る事のみ目につく
故に貧窮す

106ページ:「経営戦略は「進歩軸」と「トレンド軸」を見極めて」
 「進歩軸」は人類の進歩の方向。「トレンド軸」はその時々の流行を示すもの。現代でいえば、前者は「CPU」、後者は「たまごっち」といったところか。自分たちが開発あるいは売り出そうとしている製品がどちらに属するものなのかを見極めよとといている。

137ページ:資金が乏しい時期を過ごしたお陰で、私は「最大の生産性向上策は、社員のやる気アップだ」という確信を得ました。新しい機会やITを入れるよりは、社員のモチベーションアップの方が大きな力になります。ここを勘違いしている経営者が多いようです。
 これはそのとおり。業務システムを刷新して効率化図る・・・といって導入したしシステムの運用・管理のために、それまで以上のコストと人員がかかっていたりする。あるいは、教育に力を入れます。社内研修をこれだけ用意したからみんなちゃんと受講しなさい。とか、理念ではなく形だけで済ませている経営が多いのではないか、と私も思う。そうなると社員もただ単に「仕事をしています」的な対応になる。

147ページ:動機が善であれば上手くいく──これが私の信念になりました。
 伊那食品工業が昔、古いプレス機で社員が大怪我をしたため、著者がプレス機を新しいものに交換したときの話。相当な費用がかかったらしく、社の明暗を分ける決断だったが、理由は社員に二度と同じ被害者が出ないようにするためであったという。著者はこの文の前に「社員を不幸にする会社なら、無いほうがいい。そう思い切りました。」と書いている。

162ページ:「新入社員研修は、100年カレンダーから始まる」
 伊那食品工業には100年カレンダーというのがあるらしい。新人に対して、そのカレンダーに自分の命日を書き込ませるそうだ。そうすると、人生の短さが見えて、その間何をなすべきかが想像できるようになるという。これは早速自分もやってみた。そこでふと気づいたのが、自分にはまだまだローンが残っている。自分で決めた命日はローンを払い終わったわずか5年後であったりする。さらに、私の人生全体から見ると、まだ結構時間はある、と思ったりもした。まだまだ行けそうだ。Excelで自分の年齢と西暦を並べるだけだから、皆さんもやってみてはいかがか。

 ここで紹介したのは、ほんの一部に過ぎない。最近の会社や社会のあり方に少なからず疑念のある方には、ご一読をお勧めする。

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