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「閉鎖病棟 (新潮文庫)」帚木 蓬生

   〓 少しずつだが、心に染入る本はこれ 〓

 少女が産婦人科にいて順番を待っている。そんな場面からこの小説は始まる。彼女はまだ高校生だ。そして時は現代。なぜこの少女が登場したのか分からないまま、場面は戦争直後の田舎に移る。多少頭が混乱する。話がつながらないのだ。次にまた別な登場人物が現れる。しかもまた違う土地の違う年代設定だ。
 読み進めても、なかなか話がかみ合わない。しかし、中盤くらいになると、徐々につながりが見えてくる。ただし、この小説は推理小説ではない。
 これらは、登場人物のエピローグだ。そして、話が舞台の中心である精神病院に移ってからも、時折登場人物の時代が過去にさかのぼり、なぜ彼が病棟に来たのかを説明する。そして、こういって著者はその理由を語るのだ。
「患者はもう、どんな人間にもなれない。だれそれは何々、だれそれは何々・・・という具合に、かつてみんなは何かであったのだ。・・・それが病院に入れられたとたん、患者という別次元の人間になってしまう。そこではもう以前の職業も人柄も好みも、一切合財が問われない。骸骨と同じだ。・・・」
 小説には2種類の読み方があると思う。ひとつは心躍る読みかた、もうひとつは心に染入る読み方だ。この本はなかなか先に進まない。しかし少しずつ心に何かがしみこんでくるのが分かる気がした。そして最後は「そうだ、これでよかったんだ」と思いながら泣けてきた。

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