「人生ゲーム―ある朝ぼくの会社がなくなった」:中川淳一郎
〓 ゴールドラット氏著『ザ・ゴール』の日本版といった感じ 〓
この本はあまり気合を入れて読む本ではありません。それでもビジネス書としての価値もありそうなので、読んでおいて損は無いでしょう。出版年が2005年なので、ザ・ゴールの売れ行きに対して2匹目のドジョウを狙った本と見られても仕方が無いかもしれません。著者の意図が、この本の読者がストーリーから学ぶビジネス書として受け入れることを期待していたのであれば、その構成としては非常によく出来ていると思います。ただしビジネスの教書としてはよく知られた内容が語られているため、読者はビジネス書としての物足りなさを感じるのではないかと思います。
著者である中川淳一郎氏は、昨年「ウェブはバカと暇人のもの」を出版しています。著者はもともと小説家ではなく、編集者のようです。
この本のストーリーはいたってシンプルで、簡単に述べるなら以下のようになります。
自分が勤めていた飲食店が企業買収されて、退職。その後独立して、4店舗から居酒屋を展開。ある日、食品メーカーの創業者にショットバーで出会い、主人公の師匠のような存在になる。
途中この会長の話として、以下のようなことが語られます。
- 楽しい組織というものが、結果的に強い組織を作る。
- 会社は誰のものか?単に株主のものというわけではないはずだ。
- 金融資本主義の中では、かつての産業資本主義をもう一度見直す価値がある。
この会長が述べることは、「組織は愛」が中心ですが、しかしそれだけではビジネス書としては成り立たないので、『工夫やアイデアを生み出す文化が必要。これは、お金では買えない。』といったことも述べたりします。180ページ目では、主人公が、会長からもらった結論として、以下の5項目が述べられます。
- 人材を見つけなさい。
- くらげ屋(主人公が展開する居酒屋)の組織価値に共感できる人を見つけなさい。
- 今の時代、お金だけでは価値を創造できません。
- 株主でも買えないものは、工夫をし、差異を生み出せる人材です。
- 組織は愛です。
主人公は、これらを参考にしながらビジネスを拡大していきます。
途中、この会長と対照的な人物として、平賀源外という若手ベンチャーが登場します。この人物は、この本が出版された当初の実業界を賑わせた、ホリエモン的な人物です。
この本はストーリを楽しむ本ではありません。あくまでも、合目的的に読むべき本だと思います。そのことはあとがきでもはっきりと綴られています。あえて小説として読んだときの感想を述べるなら、清涼感がいっぱいであり、終わり方も気持ちいいものに仕上がっています。
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