「全脳思考」:神田昌典
〓 従来とは全く異なるビジネスのための思考ツール 〓
この本は、知識社会という新たな社会構造の変化への道程の中で、今までコンサルタントが使っていた「フレームワーク」や「ロジックツリー」などの知的ツールに変わり、「全脳思考」という新たなツールを提案するものです。
著者が提案するツールはいくつかあります。ひとつは、SSC(Story Streaming Concept)といい、製品や企業に物語を関連付け、それによって口コミやネット上での宣伝効果を狙うものです。もうひとつは、「CPS(Creative problem solving」という手法で、旧来の手法にとらわれず、全くかけ離れたイメージを目的のストーリーに乗せることで、より自由に発想することを提案しています。
これらのいずれも、旧来のロジカル思考を否定するものではなく、パターン化された思考にとらわれない、現代、あるいは今後のビジネスの発想に必要なものだといいます。
実際に、クラウド化が今後進むことでビジネスが大きく変化するであろう事は、いろいろな本で述べられています。この変化に対して新たな思考法で望もうと、著者は提案しています。
神田昌典氏は過去に多数のビジネスノウハウの書を発行しています。その読者はこの本、「全脳思考」という新たな展開に対して、賛否両論をAmazon上で述べています。実は著者の神田氏自身が、この本を従来の著作とは異なるものであると、理を述べているのです。著者自身によるこの方向転換が正しかったか否かは、「全脳思考」という思考法が社会の変化に適応し、現在のロジカルシンキングや、マインドマップと同様に広く展開するか、あるいは全く普及せずに忘れ去れるかによって、数年後に判断されるでしょう。
実際に、現段階では「全脳思考」が有効な思考法であるか否かは判断に迷うところです。しかし、現在マインドマップ、あるいはロジカルシンキングといったツールをビジネスに活用している皆さんには、新たなツールとしてこの本を手にとって見ることをお勧めします。この本を読むことで、そのロジカルシンキングによる思考法をより体系立てて、より効果的に活用することが出来るようになる可能性は十分あるからです。ただし、もしかしたら、皆さんは既にこの「全脳思考」を日常の中で使っていたのに気づかないだけで、実はいろいろな場面で暗黙のうちに使っているかもしれません。
前回のブログ記事で『セカイカメラ』に触れて書いたように、私も今後のビジネスはその構造事態が大きく変化すると考えています。著者はこの変化に対して、この本の冒頭で以下のように述べています。
8ページ
こうした分野・業界を超えた10年間の変貌を見たときに、先ほど私が書いた文章──[10年前と比較して、今のビジネス上の課題は急激に変化している]──では、まったく真実を表現しているとは思えなかった。そこで、私は横線を引き、次のように書き直した。
事業推進者たちは、いままったく異質なビジネスを始めようとしている
「全脳思考」は、おそらく今後徐々に増えるであろうクラウド上に展開するビジネス、あるいは『セカイカメラ』のインフラに各社が乗り込むような、従来とは異質なビジネスを考え出すためのツールといえます。新たなビジネスを発想しようとする皆さんにお勧めの一冊です。
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- いまこの三冊の本を読まなけらばならない理由(2017.01.21)
- 日本史ねなんて言わなくていい世界 『朝がくる』 辻村深月著(2016.06.03)
- 美化されつつある死を見極めよ 『総員起シ』 吉村昭著(2016.01.17)
- やはり医者はバカだ 『破裂』 NHK(2015.11.22)
- そこまでいって委員会的問題作 『破裂』 NHK(2015.11.15)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント