「グーグル的思考」:ジェフ・ジャービス著
〓 世の中いまやグーグルだらけ、だからグーグルに倣おう 〓
最近特に発売件数が多いと思しき、「クラウド」「グーグル」「アマゾン」のキーワードで区立図書館をしてみました。その結果が下記です。
検索語 | ヒット数 | 該当数 |
クラウド | 30 | 12 |
グーグル | 102 | 94 |
アマゾン | 96 | 6 |
ヒット数は実際に検索された数です。その中から本来の意味に一致するものを抽出してその数を該当数としました。ご覧の通り、グーグルと題名がつく書籍は94件もあり極端に多いのです。これは、グーグルアースや検索方法、技術的要素のマッシュアップなど、グーグル周辺の物事に関したものも多く含まれるためのようです。中には「~帝国」「~衝撃」「~破壊」などとつくタイトルもあり、いかに多面的にグーグル本が発行されているかがうかがい知れます。
さて、今回読んだ本は、そんなグーグルに関する話でした。副題が「googleならどうする?」。著者は米国のジャーナリスト「ジェフ・ジャービス氏」です。冒頭では著者がデルのコンピュータでひどい目に合わされたことを、ブログに掲載したという逸話から入ります。この著者のブログ記事は、同様の不満をもったデルユーザを集め、最終的にデルに顧客サービスの方向転換を促したという、自慢話にも聞こえるようなオチで一度締めくくります。
そんな長い前置きの後に、この本はやっと本題に入りますが、結局、著者が言いたいのはおそらくこういうことです。グーグルによって開かれた世界では、誰かがブログに載せた発言は瞬く間に世界に広まり、コミュニティを形成する。そしてそのコミュニティが、今まで権力を手中にしていた大企業にとっては脅威になるであろう、ということをいっています。
著者いわく、これらのコミュニティは企業がコントロールすべきものではありません。むしろコントロールしようとすると失敗します。これらのネット上に湧き上がるコミュニティや個人の意見をどれだけ取り込むことができるか、あるいは、ネット上の声を聴いていることを、いわゆるネチズンにメッセージとして伝えることができるかが、企業の存亡にかかわっている。そして、それを最もうまくやっているのがグーグルであり、このグーグルのオープンな姿勢に、多くの企業は習うべきであると、著者は主張しています。
著者は、ネチズンといく単語は使っていませんが、それを下記のように表現しています。
95ページ
大衆に代わるものとは何だろう? それが、ロングテール、すなわちニッチの集合体である。
今考えると、ネチズンやオタクというのは、大衆が現在のような分断された嗜好によるネットコミュニティを形成するまでの、移行期における一つの予兆だったのかもしれない。私にはそう思えてきます。まさにその象徴的なサイトが、本書の95ページでも紹介されている「Wookieepedia」です。ここでは、StarWarsに関するありとあらゆるものが掲載されています。
グーグルの出現によって、私たちは、今までよりも実に十分に情報を取り寄せることができます。そして、それはあらゆる人々に可能になりました。つまり、知識を保有しているだけでは、もはや私たちは不十分なのです。そのことがビジネスのあり方にも影響を与えると著者は言います。そして、今まで利益を生み出していたモノや、コンテンツなどから利益を生み出すことはもはや困難となっており、それらの周辺から利益を汲み取る必要があるととなえています。グーグルが検索サービスからではなく、そこに付随する広告から利益を上げているように。
著者は私たちにこんな問いかけをします。
119ページ
自問してみよう。あなたの企業の核は知識か?データか?コミュニティか?
プラットフォームか?あなたの価値はどこにあるだろう?利益はどこから入ってくるだろう?金銭は必ずしもいつも同じ形でもたらされるわけではないことを覚えておこう。
今こそ、自分の有様を見直してみる時期なのだ。
グーグルやその姉妹的企業によって、今まではなかったさまざまなサービスが生み出されています。この本ではそれらのサイトが紹介されていますが、私が特に驚いたのは、フリッカーのサイトです。あまりにもすばらしいサイトなのでここで紹介しておきましょう。内容はアクセスしてご覧の通りです。
グーグル的に考えるということはどういうことか。後半では、グーグルが製造業や広告業など現在のレガシーな業種に進出したら、どんな風に事業を展開するかを、10の業種に分けて著者が予測します。
この本は、グーグルの内実については殆ど触れません。唯一、著者がこの本で示すグーグルは、本書の以下の文章に含まれていると思います。
309ページ
ローゼンバーグによれば、グーグルは五つのスキルを持った人材を求めている。分析的思考能力、コミュニケーション能力、新しい試みに対する意欲、チームで仕事ができる能力、情熱と指導力だ。「現実社会は、教科書の持込を許された試験のようなものだ。成功できるかどうかは、そこからどんなことを学ぶかにかかっている」
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