仮定の主婦の超自分主義「普通の家族がいちばん怖い」:岩村暢子著
〓 「この本はフィクションです」の記載を、思わず探したぞ
あまりにも本物らしく見えるので、てっきり造花だと思っていたら、やっぱし本物だった。そういう錯誤ってたまにあります。特に蘭の花なんて、もともと造花っぽく育てているものだから、恐らく私には造花に見えたりします。まあ鑑賞用の花だから、その目的は人が見て楽しむと言うこと。だったら造花でいんじゃない、と思うのですが。
あまりにもあり得なさそうな内容なので、この本に書いてある30代~40代の主婦の発言って、きっと特殊な一握りを抽出してアンケートをとり、作為的に編集したんじゃないか?と思ったのですが、やっぱりよく読むと、我が家にも結構あてはまる。信じたくないけど、やはり本当なんですね。なにしろ我が家のモットーも、楽しくなけりゃ人生じゃない!てなもんですから。家族の目的は楽しむこと。だったら現代の主婦たちが超自分主義でもしかたないかな、と思うのです。
181ページ
「おかあさんって『毎日、元気で明るく楽しく!』というものでしょ!私も、できるだけそうしている。だって家族は楽しくなくちゃ!」(43歳)という発言には、座談会に居合わせた主婦全員が深い共感を示していた。今は、家族にとってみんなでにぎやかに騒げること、つまり楽しいことは欠かせないことになってきているようだ。
だいたいクリスマスパーティーとかしない家族なんて今時ないよね。ケンチキとケーキとクリスマスツリーでとりあえず盛り上がっておかないと、やっぱり普通の家族なんて言えないんじゃないかなぁ。そいでもって正月におせち料理を一から造るなんて、まずありえないでしょう。そんなことで正月早々イライラして子どもにあたりたくないしね。そういう行事って、やっぱ家族の絆がだいじじゃぁないですか。だから楽しい場をわざわざ作ってあげて、子どもたちも「一緒にいたいなっ」て気持ちになってくれる事が大事だと思うんですよね。
だから正月には、雑煮と汁粉くらいは作るけどね。まあ作るのは夫(私)だし、そのほうが味がいいから。やっぱ楽しさを演出できない盆と正月って廃れるんじゃないかと思う。クリスマスとハローウィンはやっぱお子様も楽しんでくれるからさ、今後とも商業的に成功すんじゃないかな。まあウチは形にはこだわらない主義だけどね。
とまあ、この本を読んでしまうと、平気でこんな意見がいえてしまうから不思議です。
でも、もしウチのかみさんや、この本のなかでトンでも発言をしている主婦たちがこの本を読んだと仮定するなら、「まったく最近の人達って、本当にジコチューなのが多いのよね!」なんて感想が帰ってくるんだろうな。そういった彼女たちの特徴的な反応についても、この本には織り込み済みなんだけど、きっと彼女たちは無意識のうちにその辺を理解しないに違いない。まあ、残念ながら一番の問題はそこなんだが。
214ページ
語ることが現実と異なっていたり、発言が大きく矛盾する先述の三割弱(26.4%)の主婦、そしてこのような実態から見て根拠の希薄な展望をライトに語る四割弱の主婦を合わせると(重複している人もいるため)全体の五割弱、つまり約半分に達している。これは決して無視できる数字ではない。
…(中略)…
「子供」の目線でみるならば、このような主婦(母親)はどのように映るだろうか。それはきっと「現実を見ない母」であり「事実とは異なることを語る母」であり、「言うことがすぐに変わる母」である。そして「現実に自分が行っていることとはかけ離れた考えや展望を語る母」でもあろう。
実際にウチのかみさんは、この本の中に出てくるトンでも主婦発言なんて普通にしているし、それを矯正しようなんてそぶりを少しでも見せたら、家庭内は修羅場に変わるからなぁ。変えようがないんですよね、この流れというか退廃ぶりは。たぶん、日本の半分近くの家庭はそんな感じなのだろうと思います。
自分のパートナーの言動や行動が理解できなくても、この本を読めばむしろそれが普通だと分かって、ホットひと安心してしまう自分を、後から客観視することで恐怖に陥る。まるで、安心して恐怖を体験できる大道、テーマパークの乗り物みたいな楽し痛い本でした。
そういや、この書評を読んじまったあなたの家族。実際「普通」かどうか、この本で確かめておいたほうがいいんじゃあないかい。
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