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知の宇宙旅行、頭が痒くなる「宇宙を織りなすもの(下巻)」ブライアン・グリーン著

 前回の上巻の記事で紹介したとおり、この本は妄想癖をドライブするので要注意。と思ったら、下巻ではさらにパワーアップした不思議話が展開して、もう妄想どころではありません。やがては頭が痒くなり、どちらかというとこの本自体が殆ど妄想を語っているようにも思えてくる。もちろんそれこそが、私自身の幻想なのですが。
 とにかくこの本を読んでる間は、考えちゃだめです。感じてください。

〓 ビッグバンと不確定性原理を結ぶ一本の紐

 下巻では、まず「宇宙の生い立ち」についてブライアンさんが大いに語ります。イメージするには、勝海舟が地球儀を片手に世界の中の日本を語る場面を思い出してください。ビックバンとインフレーション理論を説明。さらに、暗黒エネルギーが宇宙全体の30%を占めることをばらします。「ダーク・フォース」に似ているこの響き「暗黒物質」「暗黒エネルギー」を私は気に入りました。なんとなく邪悪な感じが好きです。「暗黒物質」を解明しなければ、宇宙は悪の手先の下に堕ちる!、みたいな。
 そしてやがて、この本の真打と思しき「ひも理論」が登場します。宇宙のあらゆる物質の極小単位は、粒ではなくて、実は紐でできているのではないか。という考えが紐理論ですが、実際に紐かどうかを実験的に確かめる方法が現代科学には無いため、あくまでも数学的論理上のお話だそうです。そして、この紐理論(超ひも理論)こそが、森羅万象の統一理論になるのではないかと期待されているのですね。

146ページ
超ひも理論は、一般相対性理論と量子力学とを首尾よく合体させるものと多くの科学者が考えているアプローチである。そしてこれから見ていくように、この論理は全ての力と全ての物質を完全に統一し、アインシュタインの夢を叶え、さらにはそれ以上になるかもしれない理論なのだ──私を含めて多くの人たちは、この理論が、もっとも深い宇宙の法則へとつながる道を切り開くかもしれないと考えている。

 この「超ひも理論」は、11次元の世界では首尾よく理論的に説明可能になるらしく、困ったことに、ひも理論を説明するための次元に関する説明が、この後長々と続きます。よく分からんが、このことを飲み会で話題にしたとたんに、会話が凍りつくであろうことだけは理解しておこうと思いました。

〓 テレスコープは携帯電話が実現した。ではテレポート、タイムマシンは?

 最終章の一歩手前の第15章では、テレポーテーションとタイムトラベルは可能か?という、現実的ではないけど、おなじみの話を展開。テレポーテーションでは、スタートレックよろしく元の物体の構成情報に基づいて、量子レベルで物体を再生成するというアイデアがあるらしいです。但し、前回の記事で私が期待した、エンタングルした対の素粒子を離れた場所に置いて、情報を光よりも早く伝達するというのは出来ないらしいです。なぜなら、一方のスピンの状態を確認したとたんに、その粒子のスピンは変わってしまうのです。結局は互いに同じ情報を得るためには電話をするか、インターネットで情報を送信するかしないといけないのだとか。かなりがっかりですが、仕方がないですね。その代わり、テレポーテーションとタイムマシンの実現性は否定できていないとのこと。つまり論理的には実現の可能性があるのですね。

〓 テレポーテーションが出来ない理由

 テレポーテーションの実現の障壁になるのは、例えばデロリアンのような物体をテレポーテーションしようとすると、10億個の10億倍のそのまた10億倍もの粒子に関する情報を伝送し、粒子の配置を組み立てる必要があるから。今現在は粒子一個のテレポーテーションは可能らしいのですが、この数は確かに不可能に近い。今現在は、ですが。

304ページ
しかし、生物をテレポートするという仮想的な問題についてあなたがどんな意見をもつにせよ、量子力学の驚くべき性質のおかげで、すでに科学者たちは、一個 の粒子ならテレポートできること、そして実際にテレポートさせたことを立証したのである。

 しかも、人間を転送するとなったら、転送された人は、本当に本人なのか?てな哲学的な話も絡んできます。もちろんクローン人間に比べれば限りなく本人に近いことは間違いありません。ブライアンさんとしては、物理的同一性が、生物の同一性とみなすべきだといっています。

〓 タイムマシンは実現可能か?

 タイムマシンについても、論理的には実現可能なのです。SF映画などで、タイムマシンに矛盾が生じる場面がよく紹介されるのですが、ブライアンさんはそこに矛盾が生じないことをまず説明しています。たとえば、バック・トゥー・ザ・フィーチャーで、主人公マーティの両親の結婚が破綻しそうになったときに、家族写真の中の自分の姿が半分消えかかっていました。しかし「多世界解釈」を用いれば、きれいさっぱりそのような矛盾は解消できます。つまり、過去に戻ったマーティがたどり着いた先は、たくさんあるパラレルワールドの別の世界に来たことにしてしまえば、その世界の未来ではマーティは存在しなくても良いことになるのです。
 もう一つのタイムマシンの矛盾。もしタイムマシンが将来発明されるとしたら、なぜ今現在、未来からタイムマシンに乗って人がここに現れないのか。この問題に対しては、タイムマシンで移動可能なのは未来に対してだけであることを、ブライアンさんは説明しています。未来に行くためには、光速に近いスピードで宇宙を旅して帰ってくれば、簡単に実現できます。しかし、過去に戻ることはできません。また、もう一つのタイムマシンの実現方法として、タイムトンネルを造って現在と未来を結ぶ方法があります。この場合でも、タイムトンネルを造った時間までは未来からの人が行き着くことができますが、それ以前の過去には移動できないのです。

 いやはや、またしても長い話になってしまいました。まあこういうのはどれだけの人が興味を持っているのかと、むしろそのことに興味を持ってしまうのですが。でも私にとっては最近の最高の一冊でした。現実から逃げたいときのために、手元に一冊買って置こうと思いました。
 ※通常は図書館で本を借りて読んでおりますゆえ…

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