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データセンター管理者への指南書 『Googleクラウドの核心』 ルイス・アンドレ・バロッソ、ウルス・ヘルツル著


〓 副題:巨大データセンターの変貌と運用の経済学 〓

 この本は従来のGoogle本?(グーグルやクラウドに関しての書籍)とは違う。いわばリアルなクラウドについて解説した本。原題は「The Datacenter as a Computer:An Introduction to the Design of Warehose-Scale Machines」。
 邦題では「Googleクラウド」としているものの、まず本書の冒頭で、バズワードとされる「クラウド」という呼び方をやめて、統合されたコンピューティングを提供するデータセンターをWSCと定義しています。

2ページ
サーバサイドコンピューティングへの流れとインターネットサービスの爆発的な普及が、「ウェアハウススケールコンピュータ(WSC:Warehouse-Scale Computer=倉庫規模のコンピュータ)」と私たちが呼ぶ新しいタイプのコンピューティングシステムを生み出した。

〓 概念ではなく固形のクラウド技術を紹介

 いくつかのクラウドに関する書籍を読んでも知ることができなかったのは、クラウドコンピューティングを提供するデータセンターは、どうあるべきかといった内容です。その本が既出となっていることを期待して、本屋で探したことがあります。本書はそんな折にある筋から出版情報を入手したもの。実際に書店で手にとって、通常は図書館から借りた本しか読まない私も、ここぞとばかりに購入に踏み切りました。
 この本には通常のメディアでは知りえない情報が数多く掲載されています。但し、データセンターという特殊な分野に関するものであるため、クラウドのユーザーが求めている内容は含まれていないかもしれません。

 本書の執筆者2名はいずれもグーグルの技術者です。その著者らが紹介する情報の殆どは論文として公開されてるものです。ですから、英文が読める人は、この本をたどってさらにWSCに関する詳細な技術情報を知ることができるでしょう。私自身はいまさらながらに英語力の重要性を身にしみて感じました。各論文は本文中に参照文献の索引番号が振られているため、巻末に掲載している文献リストから探して、ネットで確認することができます。このように、データセンターに関する技術を体系立てて掲載した上で、参考文献の索引を掲載してるということだけでも、本書は価値ある文献であると言えると思います。

 本文は全部で8章から構成されています。第1章ではWSCのの定義とアーキテクチャ概要、第2章ではソフトウェア基盤について掲載しています。以降の3章から8章までは全てハードウェアと設備に関連する記載であり、他の書籍では語られていなかったデータセンターに関する希少な情報が掲載されているのです。例えば、以下のようなデータセンター内における温度設定の問題は慣例的に20度程度に設定されているようですが、この20度という設定温度自体には余り根拠が無いことを示しています。

72ページ
効率を改善する簡単な方法は、冷気の通路(コールドアイル)の温度を、一般的な20℃から25~27℃に引き上げることである。サーバやネットワーク機器で、吸気の温度が20℃でなくてはならないものはほとんどなく、熱による故障の増加についても、その温度範囲においては経験的証拠はほとんどない。冷気の通路の温度を上げれば、冷却水の温度も高くでき、冷却器の効率を上げ、フリークーリングとの組み合わせによって、冷却機の稼働時間を短縮できる。これは、コンテナ型データセンターの効率が高くなる主な要因のひとつである。

 また、次のようなサーバの消費電力量をデータとして取得する方法は、あまり公開されていないにもかかわらず、今後のデータセンターの運営上は非常に希少な情報であるといえます。

91ページ
1.すべてのコンピュータ関連機器について消費電力の変動範囲を計測するか、できるだけ正確に推定する。計測できない場合には、デルやHPなどの主要システムベンダーがオンラインで提供している、消費電力の計算ツールを使用すると良い。

 著者が本書の中で述べているのは、データセンターが一つのコンピュータとして動作する環境(つまりWSC)が今後増えるに従って、今までは重視されなかった運用コスト、特に電力コストを削減する必要があるということです。一般のコンピュータ利用がますますクラウドに移行することで、このWSCという概念はますます重要になることでしょう。その先鞭をきる本書は、どうやら今回の初版で終わりではありません。当然技術的な進歩に合わせて必要な情報が変わってくることを考えてのことだと思いますが、著者は次回の出版を踏まえて、「第3章 ハードウェアの構成要素」で以下のように記載しています。

43ページ
本書の次の版では、本章にストレージやネットワークに関する情報を追加したいと考えている。

 いずれにしても、本書は他に類の無いデータセンターに関する情報とクラウド技術の宝庫です。クラウド化するデータセンターに関係する皆さんにお奨めの希少な一冊です。

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