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指輪を造るということ

 渋谷の彫金教室「Studio Crucible」に行って指輪を一つ創ってきました。3時間の体験コース。集まったのは、会社の美術部の面々。私を含め、ほとんどの人は初体験のようでした。しかし、正直にいって、指輪を造るというのは、意外と簡単でした。教室自体が、道具がたくさん揃っているところだったせいかもしれませんが。

〓 大まかな工程

 さて、その工程を説明しましょう。

  1. まず、制作された指輪の現物と、写真を見せて貰いました。ここで自分が作りたい指輪のイメージをつかみます。
  2. 指輪の紋様を実際に銅板に打ちつけて、作業の感触をつかみます。この時に色々な刻印を打ってみて、さらに自分が造る指輪のイメージを膨らまします。
  3. 材料(銀か銅)を決め、加工作業に入ります。材料は円環になったものかと思いきや、細長い延棒状のモノでした。長さは申告した号数に合わせて、先生が計算して切ってくれます。
  4. ポンチを打って、刻印を刻む作業に入ります。私はまず作成日とイニシャルを内側になる面打ちつけて、その後表面の紋様を入れました。
  5. 円環状に加工しやすくするため、「なます」作業に入ります。つまりバーナーで炙って金属を柔らかくします。
  6. 長さを再度調整して、接合面をヤスリで削り、接合しやすくします。専用のペンチで接合面を突き合わせます。生徒がやる作業としては、この辺が一番難しそうでした。
  7. 接合面を接着します。この作業はかなり難しいため先生がやってくれました。その後に指輪を稀硫酸につけます。稀硫酸に浸けるのは、次の(8.)の作業の後だったかもしれません。
  8. 金属棒に指輪を通して木槌で叩き、指輪を完全な円形にします。もうこの頃には指輪が完成した雰囲気になります。指輪の文様がパターンの場合は、接合部の紋様をこの後に刻印します。
  9. 円環の端部の凹凸をヤスリで平にしたり、角の面取りをして、仕上げに入ります。特に内側の面をヤスリで磨くのは、無心な単純作業なので、完成品に向けた充実した疲労を味わえます。
  10. 最後に表面をつや出しまたはつや消し加工します。

 これで、自分だけの一環の指輪が完成します。モノを造る楽しさを存分に味わう事ができました。実はあとから知ったのですが、使用した金属は「銀」でした。プラチナよりも加工しやすいのだそうです。でも銀の柔らかい輝きには魅せられるものがあります。

〓 表情を変える金属

 金属の無機質な美しさには、冷たさが宿っていました。そして、実際にその形状に意思を埋め込もうとする時には、色が変わったり、あらぬ形に変形したりと、予想を超えるモノに出会う楽しみがあります。まず、金属をバーナーで熱する時は、色々な色に変化します。まるで天空にさざめく花火を見るようでした。そして、稀硫酸に漬けたあとの銀は、表面を白く化粧して艶かしい姿に変えるのです。いわゆる純白かパールホワイトという色に近いもの。私は思わずその色を残したいと先生に申告しました。しかし、それは銀が放つ一時の表情だったようです。冷たい純白は、時間が経つにつれてやわらかい乳白色に変わっていきました。その色は滅多に見る事ができないからこそ、妖艶さを醸し出すのでしょう。金属の色というのは、大概の場合は純粋な気がして、彫金にはそういった色と出会う楽しさがあるのだと知りました。

〓 身につけるということ

 男にとっては、装飾品は単に邪魔者でしかない場合もあります。むしろ生成りの単純な形状に惹かれたりもします。しかし、自分で創ったものに関しては思い入れもあるかもしれません。いや、むしろ、かつての人類がそうであったように、何らかの用途を持った道具としての美しさを求めるのでは無いでしょうか。刀を研いだり、もっと大昔に矢じりを造る原始人の様に、金属加工には本能的な何かを駆り立てるものがあります。私も早速、自作の指輪を身につけながら、次は何を作ろうかと、むしろその目的を模索するのでした。

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Studio Crucible

 そうして出来上がったのが右の写真の指輪です。四角い文様を斜めに並べました。しかし、後からよく見ると、刻印の中には「美」という文字が…。いいのか悪いのか、まあ、偶然が織り成す趣きも、手作りのなせる技ということでしょうか。

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