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死から始まる毎日 「死ぬことと見つけたり」 隆慶一郎著

〓 未完の著、もっと続きが読みたくなる

 タイトルが何とも潔(いさぎよ)い。そしてこの「死ぬことと見つけたり」という言葉は、「葉隠」と言う、武士の心得に書かれている一文「武士道とは死ぬことと見つけたり」から取られたものです。つまり、武士というものは、いかに生きるかを考えるのではなく、いかに死ぬかを考えなければならない。この本、時は徳川家光の頃、佐賀鍋島藩のそんな武士道を実践する男(漢)達の物語です。

 主人公となるのは、斉藤杢之助という浪人。彼は毎日、朝がけに色々な死に方の中からひとつを選び、それを実践して、一度死んでおくのでした。もちろん頭の中で想像して、自らの死に方をイメージするだけなのですが。杢之助は、毎朝、死を体験する事で、日中はすでに死に人になっているのです。だから死、という事に対してのこだわりは、死ぬか生きるかではなくて、どの様に死ぬるか、という事になります。そう考えると、生に対する執着も無くなる。だから大胆な行動に出る事ができる、という。

 読む前は、武士道を論じた内容になっている小説かと思ったりもしました。しかし、そんな事はなく、むしろエンターテインメント系の時代小説と言えます。いくつかのショートストーリーが時系列に合わせて展開されます。毎回、今度は杢之助がどう出るのかと、ハラハラ、ドキドキさせらます。

 

 残念無念なのは、著者の死で、この本が未完である事。杢之助の子供達も成長し、杢之助の人生山場というあたりで、本書は、プッツリと終わってしまいます。著者がそれまでに書いていたストーリーの筋書きが残っていたらしく、本書の巻末に解説されています。誰か続きを書かないのだろうか。と思いながら、本を閉じました。

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