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機能主義から見た生物の世界 『進化の運命』 サイモン・コンウェイ著

 この本、とにかく分厚い。全体では723ページある。ところが本編は498ページで終わる。つまり、索引と注釈、訳者後書きで225ページ、約3分の1ほどは読まなくても良いことになる。一安心。

 内容は深い。深いのだが、言いたいことは一つ、だと思う。とにかく、人類の発生というのは偶然ではなく、必然的に誕生したもの。いや別に、神の存在を謳っているわけではない。科学的、歴史的に考えて、どうやらそうらしいということを言っている。

〓 分子的、生物的な収斂の世界

 前半では、分子レベルでの収斂について説明しています。たとえば、生命の誕生に当たって分子レベルの組み合わせでは、どうあがいても蛋白質の組み合わせがこれしかない、とかいった類の内容です。そういえば、最近のNASAの発表ではDNA中に、リンの代わりにヒ素をつかう「GFAJ-1」という生物が発見されたらしい。この本の著者が同様の可能性について言及していたように思います。ということは、この本は結構先見的な内容が書かれているのかもしれません。
 本書ではその後、目・鼻・口などの高等生物が持っている基本的なパーツが、実は異なる祖先を持つ生物にもほぼ同様の姿かたち或いは機能として存在しているのことを説明します。つまり、「目」を持つものは、その必要性があって自らの身体に「目」を発生させたのであって、偶然に「目」と言うものが発生してそこから進化したのではない、ということのようです。「必要は発明の母」なのではなく、「必要こそが発明の母」なのですね。
 面白くなるのは中盤あたりから。社会性についての収斂の例として、蟻や蜂の活動が紹介されます。蟻の中には巣の中できのこを育てる珍しい蟻が居るとか。これはもう私たちが人類がやっている農業に近く、結構高度な育て方だそうです。

 でも、これは単に機能主義による考え方ではないか。と、私は途中で思うようになりました。生物だけではなく、スマートフォンだって、みなiPhoneのタッチパネル形式に変わっていくのではないでしょうか。すべからく、モノには完成されたカタチいうものがあって、そこに機能が要求される以上、それに合わせた完成形へと収斂されていくのだと思います。

〓 スターウォーズ的宇宙観

 この本で述べているように、私たちの体躯がある程度完成された形だとすると宇宙人がまったく違う体躯をしているということは無いと思います。この考えを具体化しているのスターウォーズに出てきた宇宙人でしょうか。スターウォーズに出てくる宇宙人といえば、みな何がしかの形で人類に似ています。それは、宇宙人が人類に似ているのではなく、人類が宇宙の法則にしたがって進化したということなのかもしれません。
 そういえば20年ほど前「生命潮流」(ライアル・ワトソン)というニューサイエンスの本が流行したことがありました。その本では、ニホンザルが芋を海水で洗って食することを覚えたとたん、まったく違う地域でも同様のことをするサルが現れたとかいったことが書いてありました。「生命潮流」は、進化の過程では接点がなくとも何がしかのかたちでそれが伝播するのだ、といった不思議の紹介がメインだったと思います。本書の内容もそれに近いですね。確かに、進化は偶然に起こるのではなく、必然としてなされるのかもしれません。iPhoneやiPadがそうであったかのように。

419ページ
 まとめよう。農業を営むアリや、ニュージーランドのキーウィや、遊び好きのイルカや、あるいは道具を上手に使うとオマキザルが、最も感覚の鋭い動物としてこの世界を受け継ぐべきだったと論ずることが私の目的だったのでは決してない。述べたかったのは単純な観察事実だ。いたるところで起きる収斂によって、必然的に生物学的な特徴が何度も出現し、それがこの生物圏の枠組みを決めているということだ。生物の歴史のテープを気が済むまで何度も再生したとしても、その最終結果はたいして変わらないだろう。この地球では、それはたまま人間だった。それはちょうどこの本の著者がたまたまケンブリッジ大学で教員をしているようなものだ。だからどうだと言うのだろう?自明なことだが、私たち人類は、今やまったく異なる存在だ。私たちには新しい心配事が、新しい優先事項と問題が、そして何よりも重要なことに、新しい可能性があるのだ。

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