正義の見かた 『これから「正義」の話をしよう』 マイケル・サンデル著
〓 3つの正義「幸福、自由、美徳」について
この本を漫然と読むことは難しい。考えなければ先に進むには不甲斐ない。哲学に弱い私は特にそうなる。予習が必要なのだ。正義の語る上では少なくとも「幸福の最大化」「自由の尊重」「美徳の促進」という三つのテーマについて知っていないと、この本をうまく読み解けないかもしれない。そんなときに強い味方になってくれるのが以下に紹介するサイト。
このサイトでは、自分が「幸福…」「自由…」「美徳…」のうちのどの考え方に基づいて行動しているかが分かるテストシートがあって面白い。さらに、マイケル・サンデル氏の多くの講義を掲載している。そんなにたくさん掲載して、サンデルさんから抗議されないのかと訝ってしまうくらい。
もし仮に、このウェブサイトに掲載したものが、サンデル氏の許可をとっていなかったとしよう。これが事実だとしてサンデル氏がこのサイトの存在を発見したなら、氏はたぶんこんな風なことを言うと思う。
私がある日iPadを使ってウェブを覗いている時に、偶然このサイトを発見したとしよう。そして、運営している当事者に電話して、「これは著作権の侵害だ」と訴えたとする。これは正しい行為といえるだろうか?
私が功利主義だとすれば、この訴えは間違った行為だと映るだろう。なぜならこのサイトで公開されいる議論を展開するのは、多くの人々に幸福をもたらすことを目的としており、私にもたらされる金銭的利益の如何に関わらず、この論ができるだけ多くの人に行き渡ることを目的としているはずだからだ。だから彼らの行為は私が目指す目的に共感してむしろその手助けをしているといえる。
一方、私が自由主義者である場合は、私の訴えは正当化される。確かに私の目的は、自分の論理をできるだけ多くの人々に伝えることだ。しかしその目的の一部には、名声や金銭的利益を得たいという私の強い欲求も含まれているのだ。この多大な努力による果実を、私の同意もなく他人にかすめ取られることが許されてしまえば、成功者こそが報われるべきであるという、アメリカ人が根源的にもつ理念を覆すことになる。その結果、本来人々が目指すべき成功や成長などは著しく阻害されてしまうかもしれない。
これらの二つの立場を収斂させ、もっとより良い結果を導く方法はないのだろうか。もしあるとすれば、私がこのサイト運営者の不当な行為を正し、謝罪と寛容をもって、同じ目的を両者で達成することだろう。私に無断で私の成果を公開したという彼らの行為は道徳的には間違いかもしれない。しかし、私の考えに迎合し、この考えをもっと一般に広めるべきであるとする彼らの行為自体は、世間一般からすると美徳であるには違いないからだ。
※上記の内容はマイケル・サンデル氏とは無関係であり、あくまでもブロガー自身の妄想でしかありません。
〓 正義はどこにいった?
やっぱり今の時代は人類が荒廃しているのではないかと思ってしまう。いたるところで紛争が起こり、金銭的な格差が広がり、弱者は自己責任の名の元に追い詰められる。幼児を抱える母親はシルバーシートの前で立ちすくみ、老人の一部は豪勢な余暇を過ごし、一方で若者たちは希望が希薄になっていくのを感じながらなすすべがない。正義はどこにいったのか?。そんなときには黙って残り少ない正義を見つめるよりも、思い切って正義を探し求める旅に出たほうがいい。そんな旅の水先案内人をサンデル氏がやってのけた。航行記録がこの本というわけだ。
さて、この本を読んだ感想として、私なりの短い「正義」についての話をしよう。正義とはつまり、生きていく上で不要ではあるが、よりよく生きるためには必要なもの。に違いない。
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