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イノベータとしてのアップルとジョブズ 『スティーブ・ジョブズ』 竹内一正著

〓 副題:失敗を勝利に変える底力

 スティーブ・ジョブズの半生を語ったのかと思いきや、どちらかというと類まれなイノベータとしてのジョブズの才能を検証するといった内容。ですから、ジョブズの人物像を知るつもりでこの本を読んだ人は多少期待はずれだったかもしれません。実は私もジョブズの破天荒な人生を目の当たりにしようとこの本を読み始めたのでした。しかし、かといってこの本の内容にがっかりしてはいません。むしろビジネス書としての価値はそこそこ高いと思います。
 この本では、アップルで成功したプロダクトとそのビジネス展開を紹介し、なぜスティーブ・ジョブズがこれらの成功を成しえたかを解説しています。その対極にあるものとして、大企業がなぜアップルのように画期的な製品を生み出すことができなかったを語ります。

 いまやビジネスリーダーとしての企業は、アップル、グーグル、アマゾンなどの新興企業に集約され、旧態依然とした大企業はその後塵をなめているといわざるを得ません。そこには、アップルがベンチャー企業であったことと、スティーブ・ジョブズという新しいビジネスリーダーが折り重なったことでしか成しえなかった何かがあります。

46ページ まとめ
大企業の三つの大弱点
1.意思決定に時間がかかること。意思決定自体が、全部署の意向を満足させる最大公約数となってしまう。
2.部門の利益が優先されるため、顧客視点にならない。さらに、既存顧客ばかりが議論の俎上にのぼるため、みえざる新規顧客は無視され、チャンスを先駆けて手に入れることはまずない。
3.新技術の将来性を見抜けない。

48ページ
その点、零細企業はなんの心配もない。スピードとアイデアで勝負できる。それが零細企業の強みだ。

 しかし、いまやアップルも零細企業ではありません。それでも、アップルがかつてガレージで商売を始めた頃の遺伝子をジョブズは引き継いでいるからこそ、画期的な製品を生み出し続けることができているのでしょう。本書では、ジョブズが語りかける遺伝子を「Jobs' Work」として各章の末尾に挿入しています。以下はその中のひとつ。

60ページ「Jobs' Work」
大企業の長所だけを見てうらやましがるのは間違っているし、零細企業のハンディキャップだけを見て悲観するのももったいない。ハンディキャップが長所になるところで戦うことが重要だ。歴史は、画期的な製品を生み出せるのは零細企業であると語りかけている。その一方で、どんなに画期的な製品を持っていても、ダメな経営をしていては会社がダメになることも事実である。零細企業だからダメなのではない。あくまでも人と経営なのだ。
▶何者かであるより、何者になりたいかなんだ。

 ジョブズ氏が今年3度目の病気療養をしました。今のところアップル製品のラインナップへの影響は出ていませんが、今後のアップル製品がどう進化するのか、あるいはどう変化するのかはまったくの未知数です。iPhone、そしてiPadによってホームワークからビジネスに至るまでのコンピュータ環境が大きく変わりました。そして、周りの企業がアップル製品に追随するばかりであることを考えると、如何にiPhone、iPadが画期的な製品であったかが分かると思います。
 イノベーションを起こすことができる企業、人、モデルの姿を知りたい方にお奨めの一冊です。

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