恋愛と親子について 『八日目の蝉』 角田光代著
恋愛をして結婚しそして子どもができる。順番が違っていても、大まかに言うとそうなる。この順番に正解はないし、たぶん間違いもない。
例えば、子どもが欲しくて結婚するのもありだろうし、子どもができちゃったから結婚してもいいだろう。しかし、結婚をしている相手との間に子どもができた場合は少々、いや大変話がややこしくなる。そこからさらに、不倫相手の子どもを誘拐してしまったらどういうことになるか、というのがこの物語の始まりだ。
プロローグ
野々宮希和子が赤ん坊を誘拐するシーンを二人称で語る。
1章
希和子の視点(一人称)で、逃亡する自分の顛末を語る。
2章
秋山恵理菜の視点(一人称)で、自分の過去と裁判中の希和子の証言を語る。
エピローグ
ネタばれしません。
そういえば、先日読んだ『永遠の0』も同じような構成だった。第三者からの視点で語るオープニングとエンディングで本編を挟み込むというのは最近の流行なのだろうか。読むものにとっては、旅行に行く前に地図をみて、実際に旅をして、帰ってきてから写真を見る。といったような、最初と最後がしっかりとまとまった印象を与えるのかもしれない。
それでもこの小説の面白さは、本編の構成がサンドイッチ形式なっているから、ということから発するものではなく、おそらくストーリを奏でるような、和音を積み重ねるような旋律のうまさにあると思う。センテンスを短く言い切るのも、私は好きだ。そしてストーリがラストに近ずくと、結末を予想したくなる。三つほどパターンを考える。どれもハズレだった。
この小説は去年NHKでドラマ化され、今年また新たに映画として封切られるらしい。小説ができてドラマ化されそして映画化される。見る順番に正解はない。たぶんこの小説なら、どの順番に見ても間違いないだろう。
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