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国家権力からの逃亡劇 『ゴールデンスランバー』 伊坂幸太郎

 伊坂幸太郎の代表作とか、あるいは最高傑作とか、アマゾンの書評を見るとそんな評価もあるらしい。ということでそれなりに期待をしつつ読ませていただきました。しかし、期待ほど面白かったわけでもなく、かといって期待はずれ?かと言われればそういうわけでもないという中途半端な気持ちが残りました。

 伊坂作品の例の「日常と少しだけずれた感覚」というのが裏目に出たのでしょうか。ここまでずらすのなら、あちら側の世界もはっきりさせて欲しかった。というのが正直な感想。ここからは多少ネタバレゴメンなさい。要するに、主人公の青柳が何者かから逃げ続けるという設定にあるその「何者?」かがよく分からずに終わってしまう。どうやら国家権力らしいのだけど、そこは何らかの形で勧善懲悪。つまり悪い奴らを懲らしめて欲しかったのに。そのワルモンたちが現れないんじゃ、懲らしめようがないですもの。しかし、国家権力的ワルモンたちを登場させるとその時点で伊坂作品ではなくなるような気もします。

 それでも、この作品は現在の世の中の多くを風刺しています。国家権力、監視社会、冤罪、雇用の階層化、といった問題を登場人物にライトに語らせる、そのすれすれの現実感というのが良いです。

 色々勝手を言わせていただいたけど、面白いです。ジンワリと記憶に残る、伊坂幸太郎作品ですねやはり。

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