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動きが聴く者を魅了する楽団 『駒澤吹奏楽部』 in 吹奏楽祭2011マーチ&ポップス・イン・HIBIYA

 暑いさなかではあったが、娘の通う中学校が出演するということもあって、日比谷公会堂で開催される「吹奏楽祭」の会場に来ている。このお祭は、東京都内の小中学校、高校、大学、社会人の吹奏楽団の中から、選抜された団体が演奏を披露する。屈指のメンバーだけあってそれぞれにレベルが高い。それでいてチケットは僅か千円というから、生演奏をあまり聴く機会のない私にとっては、毎年の楽しみになりつつある。目あてはやはり、高校生以上の団体だ。
 中でも極めつけは5番目に出場の駒澤大学吹奏学部だ。昨年も出演したこの団体は、完全体育会系吹奏楽団と呼ぶにふさわしい。彼らが出場する前には、なぜかステージが空になる。その空虚な空間の下手から、パーカッションが響き来る。
 ダンダラダダダダ、ダンダラダダダダ、ダンダラダダダダダンッ。
 ダンダラダダダダ、ダンダラダダダダ、ダンダラダダダダダンッ。

 響きと供に屈強な軍団が、そのリズムにのせて中央に向けて行進だ。そう、ゆるりと行進しつつもそのステップはキビキビと厳しい。肩にパットの入った青い制服は、なぜか宇宙戦艦ヤマトを想わせる。
 ダンダラダダダダ、ダンダラダダダダ、ダンダラダダダダダンッ。
 縦横無尽に歩む者どもは、やがて定位置についてピタリとその動きを止める。
 ダンダラダダダダ、ダンダラダダダダ、ダンダラダダダダダンッ!
 目を奪う一糸乱れぬその動きにかかわらず、演奏に呼吸の乱れはない。見るほうも背筋を伸す。驚いた事に、その激しい動きにもかかわらず、上半身はかたくなに姿勢を保とうとする。彼らはいったいどんな訓練を積んでいるのだろう。なめらかな音の響きと相まって、直線的な動きが不思議な心地よさを聴く者にもたらしてくれる。

 忽然とその数名がステージから観客席へと躍り出た。トランペットが、ホルンの音が私の間際を通り過ぎる。なんだか愉快な音の響き。と、ふと通り過ぎる彼の後姿を見ると、帽子の下のおくれ毛が見えた。約半分は女性なのだろう。そんな事にも驚きを発見。

 いったい誰がこのマーチングスタイルを編み出したのだろうか。もともとは軍楽隊を発祥とするマーチングバンド。きびきびとした動きの由来。しかし、駒澤大学のそれには少しくユーモラスを交えていて、かつ大胆な振り付けを加えている。他の吹奏楽団も、その演奏のさ中に様々な動きを加える様になってきた。そのルーツは、駒澤大学吹奏学部なのかもしれない。
 来年もまた来るだろうこのステージで、彼らの勇姿を見るために。

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