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極大極小の果てを見る 『宇宙は何でできているのか』 村山斉

宇宙は何でできているのか (幻冬舎新書)

副題:素粒子物理学で解く宇宙の謎

〓途轍もなく難しい話を、すこぶる分かりやすく解説

 本のタイトルから、この本の全文が宇宙に関する話に思えますが、そうではありません。サブタイトルにある通り、どちらかというと、素粒子というミクロの世界に関する解説の方が多いです。しかし、臆することはありません。他のブログ書評にもあるとおり、きわめてわかりやすく書かれているので、途中で投げ出すことなく最後まで読めます。いや、読めました。特に、日本人の活躍が多く書かれていて、私は少しく安心できました。日本は先進科学分野で最先端をいっているんだって感じで…。

 話の流れは、まずは広大な宇宙の話から。三分の一を過ぎたくらいに、素粒子物理分野へとシフトします。最後は統一理論、つまり宇宙と素粒子を統一する理論の候補である、ひも理論へと落ち着きます。

198ページ
 超ひも理論は、素粒子を「点」ではなく1次元の広がりを持つ「ひも」だと考える「ひも理論」から生まれました。ちなみに「ひも理論」の生みの親は、南部陽一郎さんです。

 こんなところにも日本人の活躍があったのですね。うれしい限りです。しかしこの本では「ひも理論」に関する詳しい説明はありません。なんといっても、現在世界中の物理学者が取り組んでいる最中の、最先端の理論ですから、新書での解説には限界があるということでしょう。この本を読んで「ひも理論」をもっと知りたくなった方には、ブライアン・グリーン著『宇宙を織りなすもの』がお勧め。ただし、こちらもわかりやすい解説があるものの、ボリュームはかなりのものです。

 ところで、理系の方なら昔こんなことを考えたのでは?。たとえば、全ての原子や電子の位置と動きを把握できれば未来は予想できる。とか、物体を極限まで拡大していくと、原子の中に宇宙と同じ構造が見える。とか。星新一のショートショートにはこんな話がありましたっけ、「どこまでも拡大できる顕微鏡である物体を観察していた科学者が、原子の構造をさらに拡大していくと、やがて地球のような物体を見つけ、最後は自分のはげ頭を見た」。
 そういった荒唐無稽の妄想癖をお持ちの方は、きっとこの本を楽しく読めることでしょう。いやそうでない人にもきっと楽しいはずです。
 極大と極小の果てを見て、人生のつまらない悩みを吹き飛ばしたいときの起爆剤にどうぞ。ただし、くれぐれも爆薬には反物質を使わないように。

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