見えない元気が現れる 『スティーブ・ジョブズ驚異のイノベーション』 カーマイン・ガロ著
前回読んだ本『スティーブ・ジョブズ驚異のプレゼンテーション』の続編である。
スティーブ・ジョブスが世界を変えることができたのは、プレゼンテーションがうまかったからなのか。いや、決してそれだけではない。では何がイノベーションをひき起こす要因となるのか、という話。
〓 日本でイノベーションが成せない事情
しかし、この本に書いてある事を実行すれば、アップルのようにイノベーションをひき起こせるというわけではない。確かに、この本には7つの法則のようなものが書いてある。但し、これらの法則めいたものは、簡単に従えるものではないのだ。仮に、この法則に従がってイノベーションを引き起こそうとしても、製造業のほとんどの企業が大企業と化した今の日本では難しいだろうと思う。おそらく、その会社がベンチャー企業であるか社風がベンチャー的でないかぎりは、頭の固い上層部にいとも簡単に潰されるだろう。わかりきった事を書くなとお叱りを受けそうな気がするのだがあえて書いてみた。
この本を読んでいると、かつてのSONY WALKMANの発売が今となっては奇跡に思えてくる。HONDAのスーパーカブは世界を変えたのだろうか。日本自身がイノベーションを望まなくなったのだろうか。確かに今の日本には仕組が変わると困る人々が多く居るのかもしれない。
〓 日本人にとってのこの本の価値とは
私の個人的な解釈となるが、この本を読む事で少しだけ考え方が変わったことがある。自分がもつ可能性をもう一度見つめなおすべきであろうと思ったのだ。自分が本来何をやりたかったのかをもう一度問いなおすべきだ。この本の価値はそこにあると思う。
スティーブ・ジョブズのイノベーションは、自分がやりたいことに真剣に取り組んだ積み重ねの結果である。イノベーションを引き起こすには、強い意志の力、つまり情熱がない限り、事は困難であることが読んでいて分かった。情熱の積み重ねが必要なのだ。だから中年になってからこの本を読んだのでは遅すぎる。それでも、もう一度立ち止まって今日なすべき事が、本当に自分が望む人生の一歩なのかを考えてみるべきなのだ。確かにそれは、世界を変えることとは何の関係もない、ごく個人的な事情にすぎない。それでも、まわりが自分を変えてくれるのを待つのではなく、自分が小さなイノベーションを重ねて変わっていくべきなのだ。こういった、やる気のような元気をもらえるのは、前著と同様なのである。
私が私というフィルターを通してこの本から受けたメッセージ次の2つだった。
- まず、自分を好きになろう
- そして、世界中の誰かの為になる事をしよう
〓 2匹目のドジョウとなったか
以下は余談。この本の副題は、「人生・仕事・世界を変える7つの法則」。
しかし、原題でのサブタイトルは
「Insanely Different Principles For Breakthrough Success」
(画期的な成功のためのむちゃくちゃ凄い原理)
である。日本人はどうしても、成功法則とか、方法とかに心をうばわれるようで、それを見越して出版側で原題をアレンジしたのかもしれない。しかし、前著を読み終えたばかりの私には「7つもあるのか?」と思ってしまった。実際内容としては7つの章から成っているのだが、やはり3つで十分だ。残念ながら、後半は事例が多数出てくるところで、筆者の言いたい事が見えなくなってきた。
前著に比較すると、冗長な構成になっている。厚みは半分でよかったのではないか。それに、もっとジョブズ自身の事に多くの紙面をさいてほしかった。その意味では、後に発刊されるという、その名もずばり『スティーブ・ジョブズ』(ウォルター・アイザクソン著)に期待している。
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