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電子書籍を初めて完読 『IT批評』 眞人堂

IT批評 創刊1号〓 購入のきっかけ

 確かあれは、去年のことでした。伊藤洋一氏のポッドキャスト番組で『IT批評』創刊号の紹介がありました。そこでさっそく本屋で立ち読みしてみたら、内容的になかなか読み応えのあるものだったので、とにかく一冊買うことにしました。ただし、紙の本ではなく電子書籍として。なぜなら、紙版が1,000円なのに対して、電子書籍版は500円だったからです。

〓 コンテンツそのものついては[★★★★★]

 内容はすばらしく知見に満ちたものでした。しかも雑誌でありながら、本体には広告がいっさいないというのがいい。ただし、新興IT企業の宣伝とも受け取れる寄稿はありましたね。タイアップ企画のような感じの記事がそれとなく挿入されています。それでも、記事の内容としては、極めてまともで、単なるプロモーション的な文章ではなく、現状の問題点を踏まえたものになっています。その点、好感が持てるので、コンテンツとしては文句なく★5つです。
 伊藤洋一氏の記事は「IT批評Vol.1」に掲載されています。他の記事とは線を画して、クラウドを利用者側の目線から捕らえて論じており新鮮で斬新です。ITに関連する仕事している私にとっては、他の記事も非常に知見に満ちたものでした。特にVol.1に掲載されている「IFRS」に関する記事は、この書籍を読まなければ得られない情報でした。現在はまだ既出がVol.0~Vol.2と少ないのですが、各号でテーマを絞って記事を展開するようです。Vol.1では「クラウド」、Vol.2では「ソーシャル」と展開しており、今後どのようなテーマで各号を展開するのか今から楽しみです。

〓 創刊0号は画像データだった

 「創刊0号」は、eBookJapanから購入しました。eBookJapanはどちらかというと漫画の掲載が多く、そのためか電子書籍は画像ファイルとして処理されています。ですから、ページを拡大すると文字がぼやけるのです。もちろんフォントの拡大縮小などはできません。そもそもフォントのデータを持っていないのですから。漫画であればいざ知らず、一般の書籍としては、これはいただけません。電子書籍としての利点をほとんど生かせていないように思いました。

〓 創刊1号はAppStoreから購入、あまりにシンプルすぎる

 一冊目「創刊0号」を読んで面白かったので、最近「創刊1号」をやはり電子書籍版で買いました。今度は、AppStoreからの購入です。値段は350円。こちらはPDFで処理されているらしく、ページを拡大しても文字がぼやけることはありませんでした。ただし、ページにしおりを置くことができません。まったくのデータのみの状態で配布されているのです。ナビゲーション用のメニューは「目次」だけで、他には一切ありません。シンプルといえばそうなのですが、あまりにシンプルすぎて、これもまた、電子書籍の利点を生かしていないように思えます。アプリを起動すると、前回開いたページを表示するのと、そもそも雑誌なので栞がなくても問題ないといえば確かにそうなのですが、紙の本のように覚えておきたい箇所にマーキングすることもできないので、不便といえば不便には違いありません。
 iPadでこのアプリを購入すると、iPhoneでも同じ書籍を閲覧できます。いわゆるユニバーサルアプリといやつです。それは良いことなのですが、実はiPhoneでもiPadと同じページレイアウトで表示されるのです。iPad用に最適化されているページレイアウトがiPhoneの狭い画面に表示されるので、文字が恐ろしく小さく表示されます。ページを繰るたびに、画面をピンチして拡大する必要があるので、これまたどうにも扱いにくくて仕方がありませんでした。
 ちなみに、現在「IT批評創刊0号」のiPadアプリ版は無料で提供されているようです。「IT批評Vol.2」は残念ながらまだアプリ版では提供されていません(2011年11月)。

〓 日本の電子書籍はまだ黎明期、AmazonKindleに大いに期待

 以前の記事でも書いたように、結局、まだ日本では電子書籍は黎明期にあるということなのでしょうか。「IT批評」は複数の電子書籍出版サイトから配信されていて、しかも、各号によっては配信されていなかったりします。一冊の電子書籍を購入するために、「eBookJapan」や「パプリ」「FujisanReader」といった複数の電子書籍販売サイトから探さなければならない状態というのは、それほど長続きするものではないと思います。Amazonが日本の出版物の電子書籍版を販売するようですが、これによって電子書籍の購入窓口は一本化されるかもしれません。もしも、Kindleが縦書きにも対応したそのときには、私は喜んでKindleユーザーになります。そして、これは1990年代に、NECのパソコンが当時のアメリカから来たPCメーカーであるCompaqによって駆逐された記憶を呼び覚ます出来事なのでした。

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