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金魚鉢に見える幸せとは 『2012年2月24日、朝まで生テレビ:”幸福な若者”の本音』

〓 とりあえず幸福な若者の幸福論

 朝まで生テレビを見ている。今日の議題は若者による若者論。出ている人たちは全員個人的に将来の心配がなさそうな、一応若者たちだ。
 田原さんが議論の発端としたのは総務省が調査した日本人の満足度調査。この調査では単純に、「全体として、現在の生活にどの程度満足しているか?」といった質問をしたのだから、主観的な回答しか得られていない。宋文洲さんから、どこで調査しても同じような結果となるという意見がでた。それはそのとおりだと思う。「あなたはいま気分がいいですか」という質問の結果に限りなく近いだろう。

 そこで、今の若者たちが満足(幸せ)と回答した比率が高かったものの、将来不安や日本行政の問題点を顕していないという結論になった。幸せと回答した若者たちの中には、「今はまだ幸せである」という回答も含まれているかもしれない。グラフの結果は中年の値が低くなるすり鉢型を形成した。今という時間軸で切り取った答えを世代別に統計を取っていることを想定して、時間を前後に引き伸ばした場合の表を書いて見た。これは私個人の仕業。結果的に「今幸せ」ということと「将来幸せ」ということとは無関係だ。

若者 : 昔幸せ →今とりあえず幸せ →将来不幸かも
中年 : 昔幸せ →今は以前より不幸 →将来不幸かも
老人 : 昔幸せ →今の老後は幸せ  →将来どうでもよい

 番組では、このままではこの国の将来はみな不幸になるという意見が出た。田原さんがこの議論で取り上げたのも、若者の将来が暗いからだ。なのに、若者たちはなぜ声をあげないのか?という疑問だ。東浩紀からかえってきた答えは「それでいいじゃん!何が問題?」といったもの。彼は「悪魔の囁き」の役。評論家荻上チキの意見はまともで「問題に気づいていいないのなら気づかせるべきだ」というもの。彼は議論の修正役に徹していた。

 この議論の中で、もっとも白熱したのは少子化問題。少子化は確実に国を滅ぼすというのが大方の意見。もっと政府が少子化対策を進めるべきという意見。日本全体が少子化に対する問題認識が無い。千葉市長熊谷氏は特に老人たちにその認識がないという。子ども福祉に力を入れると、老人たちから「老人福祉になぜ力を入れない!」と怒られるのだそうだ。

 確かに少子化は問題の根源だ。なぜなら、年金問題、雇用問題、経済、教育、格差すべてに絡む問題だからだ。子どもは国を維持している国民の原初だから、あたりまえである。ではなぜ、少子化問題が解決しないかというと、老人が多いから。彼らは自分たちのことしか考えない。もうすぐ死ぬのだから10年後の日本はどうでもよいのだろう。そして民主主義のジレンマが始まる。将来を考えない老人たちが握っている票が日本の将来を決めようとしている。
 このダウンスパイラルを転換することができるのは国民の意識だと思う。国民の意識を時系列のピンポイントで一気に変える必要がある。それができるのはファシズムだろうか。そうではないとしても、民主主義のジレンマを転換できるのは、民主主義以外の何かで無ければならないことだけは確かだと思う。

 久しぶりに朝ナマを見たのだが、面白かった。田原総一郎が意外と元気でびっくりした。しかし、今回の議論で「格差と貧困」が扱われなかったのは残念である。赤木、湯浅、雨宮といった本当に一般の若者の側にいるメンバーにも出てほしかった。なぜなら、実際に民衆の意識を変えることができるのは、今不満を持つ民衆だと思うから。この番組からは残念ながら問題を抱える当事者としての声が聞こえないのだ。
 番組としては面白い。しかし、効果は薄いかもしれない。実際には金魚鉢のなかの金魚を見ながら議論してるだけではないか。その金魚とは、無策を繰り返す老政治家たちだ。彼らには金魚鉢から飛び出す能力が無いし、そうする必要も無いだろう。だれか金魚鉢をぶち壊さないか。

 結局、議論は最初からあった結論に戻る。若い人間が立ち上がらなければこの国は変わりようが無い。立ち上がるきっかけが無いのかもしれない。宋さんの一言が一番響いている。一度どん底まで落ちれば、再び希望を持って日本人は立ち上がるだろう。

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