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アイフォニア(iPhoner)には、これがいい!:その42[Kinoppy]

〓 電子書籍を買おうと思わせる、その気にさせる

 以前のブログ記事「なぜ日本で電子書籍が普及しないのか?」で書いたとおり、私は電子書籍の普及については懐疑的でした。理由はその記事に書いたとおりです。どうしても、手にとって感じることができない電子書籍というのは不安にさせてくれるんですよね。そんなの電子書籍だからしょうがない!なんていわないでください。現に、ページめくりにカールアニメーションを採用しているのも、紙をめくるイメージに近づける努力。よく考えたら、必要ないですよね。でも、あればやはり使ってしまう。これってめくる動作を現実の身体性に近づけるためだと思うのです。

〓 活字を生かした電子書籍

 それで、いろんな電子書籍を試してみて思うのは、読む側のことを考えてないでしょ!てことなんですよね。特に初期の流通側が提供するブックリーダーはイメージPDFをそのまま表示するような形態が多かったです。漫画とか雑誌を中心に販売するサイトのリーダーは特にそうですね。いわゆる自炊で電子化して、PDFリーダーで読むのとなんら変わらない。活字を読みたい読者にとっては何の恩恵も無いですよ、はっきり言って。
 ところが、Kioppyはどっとブック形式のT-timeと、XMDF形式のブンコビューアをうまく取り込んでいます。どちらもSonyCLIEの時代からお世話になった、わりと老舗の電子書籍アプリなんです。いいとこに目をつけましたね、紀伊国屋さんは。やはり、電子書籍の強みを生かしたアプリでないと、使うほうは読む気になりません。フォントの大小や行間、縦書き横書きを調整できるのが電子書籍の良いところ。端末の画面の大きさに合わせてページ単位の文字数を調整してくれるのも、実にありがたいことです。これで、自宅ではiPad、電車の中ではiPhoneという、読む場所を選ばない電子書籍を読むことができるようになりました。
 ちなみに、iPad,iPhoneにKinoppyをインストールすると、秀英明朝というフォントをダウンロードします。このへんに読者に対する姿勢が現れていると思いますね。

〓 電子書籍に端末選択の自由を

 紀伊国屋書店が電子書籍に力を入れているのを伺えるのが、このフレーズ「電子書籍に端末選択の自由を」。もちろん「書店選択の自由はないのよ!」といいたいのがみえみえなんですけど、私たちがほしいのは電子書籍ですから、どこから購入してもいいんです。極端な話、三省堂書店に行って見つけた書籍を、その場で紀伊国屋書店の電子書籍サイトから購入するというのもありですよね。
 話がそれましたが、できれば私としては、電子書籍用の端末をひとつにしたいんですよね。理由は前の記事で書いたとおりで、どこに自分が読書中の書籍があるのか、物体的にわからなくなると困るからです。iPhoneのなかにあるのか、iPadのなかにあるのか、はたまた、BookGateで買ったか、Kinoppyで買ったか、それともiBookで読んだんだっけ??自分が購入した本なのに、これでは去年読んだ本を読み返そうにも、まったく見つけるのに苦労しそうですよね。
 だから本当は、iPadやiPhoneは読書には使いたくなくて、KindleとかReaderとかを使いたいんです。軽くて電池も長持ちするようですしね。とにかく本を読むための端末を「これ!」と決めておきたい。でも今の電子書籍の販売形態がそれを許していなかった。他の書籍アプリでも、クラウドに対応して複数の端末で読むことができるものもあるんですが、将来的にどの端末まで対応させるのかわからないものが多いのです。結局、購入した電子書籍を将来見失うことを恐れて、どこからも電子書籍を買えなくなっていました。
 ところが、です。KinoppyはSonyReaderに将来的に対応するらしいではないですか。というか、もう対応しているんですね。つまり、いまはとりあえずiPadで読んでいて、将来Readerを購入したときは、買った本をそちらに移転できるということですよね。それなら将来の不安はないです。まあ、Reader側の制限で多少手間はかかりそうですが。それでも紀伊国屋のウェブサイトにはReader端末を登録する機能があるようで、ここにも電子書籍を読む側への配慮が感じられます。

 それと、どの端末でも読んだ軌跡は連動するようです。しおりをおいたページは、どの端末でもほぼ同じ位置にしおりが配置されんですね。これはすごい。あと、購入後に最初に本を開いた後、閉じたときのページはほかの端末にも引き継がれるようです。つまり、外でiPhoneで購入して電車の中で読んで、うちに帰ってきてからiPadで同じ本を開くとすぐに続きから読めるみたいですよ。いや、おそれいりました「(-.-)

〓 紙の書籍販売をベースに、さまざまな端末で

 これも、紀伊国屋さんのコンセプトです。つづいて
  「本と電子書籍の両方を楽しめる環境の拡大を目指しています」
 とあります。
 ほお、なるほど。読者としてはうれしい限りです。紙の本には紙の本のよさがある。そのことを良くわかっていらっしゃる。私は図書館派ですが、本の内容によってはどうしても自分の手元に置いておきたい本もあります。そういう本はどうするかというと、ネットで購入するんですよね。主にアマゾンですが。書店で購入しても良いのですが、もう内容のわかっている本を書店で購入することはありません。わざわざ持ち運ぶのも面倒ですしね。
 書店に行くのは、本を買いに行くというよりは、世の中の動向を知りたいからです。たとえば、2000年ごろはサービスビジネスに関する書架というのが無かったんですね。ところが、2005年頃からサービスに関するコーナーが各書店にできてきた。あるいはシステム運用についても同じですね。新しく発生した技術や、社会情勢を知るためには、書店に行って新しく設置されたコーナーを見つけるのが一番です。多分今はまだロボットのコーナーは無いと思いますが、将来的には単一の棚ができるのではないかと期待しています。私にとっての書店は、そういった探索の場なのですよね。えーと、つまり書店で本を買うことは殆ど無いです。すみません。

 ここまでで、電子書籍に対する私の希望を書いてきました。
  1.電子書籍としての自由度があり読みやすいこと。
  2.アプリや端末で、電子書籍が分断されないこと。
 でも最後にもうひとつのハードルがあります。これはあらゆる読者にとっての疑問かもしれません。つまり、電子書籍のほうが価格的に安価であること。同じ値段だったら、紙媒体の書籍を買います。持っている価値に差がありますからね。当たり前のことです。少なくとも一度読んだ本を古本として販売した場合の価格を差し引いた額ではないと、読者にとっては電子書籍を買う理由がなくなりますよ。電子書籍の良いところは場所をとらないところです。でも紙媒体の本も、ブックオフに売ってしまえば同じことが実現できてしまう。しかも、キャッシュバックがあるわけです。このキャッシュバック分を安くしてくれたら、電子書籍を買うことに意義があると思いますが、皆さんどう思いますかね。

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ホーム画面です。でも立ち上げ時に毎回この画面が出るのではなく、終了時に表示させていた画面がまず出てきます。
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書棚のイメージですね。紙の本もサイトから購入するとここに登録されるようです。
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辞書を選択できるのですね。デフォルトではすべてオンです。
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iPadでは見開きでちょうど良い文字サイズになるように調整されているようです。終了時に開いていたページが次回立ち上げ時に開かれます。
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iPhoneでの表示はやはり狭いですね。でも文字は同じ大きさで表示されます。

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