二冊の本から 「『読書力』と『読書術』はどうちがうのか」
今回もまた、二冊の本を取り扱う。『読書力』と『読書術』、どちらも読書に関する事柄を論じた代表的な書籍である。と思われる。
まず、それぞれの書籍の内容をデータとして書き出しておく。
〓 それぞれの特徴
まずはそれぞれの本を読んだ感触を短く述べておきたい。
『読書力』
著者は「声に出して読みたい日本語」を書いた教育学者である。それだけに、読書ということに関しての考察は深い。そしてこの本には、なぜ読書が必要かが明確に書いてある。さらに、書籍の種類を分類し読み方を分類して説明している。そこから読書力の基準を設けている。これらを、順を追って書いており、論理的でわかりやすい。
これから読書を習慣化しようと考えている人にはよい本である。巻末の「文庫百選」は眺めるだけでも十分楽しい。
『読書術』
著者は、評論家ということになっている。特に日本文学に関する評論が多いようだ。この本は1962年初版だ。わりと古典的な本である。文章に少し難しい部分があり、やや散文的になっている。一般の人は知らないような高尚な命題や人物や作品が登場する。ある程度読書力を持つ人が、あらためて読書について考察するために読む本である。
著者の自慢話やら、庶民には何のなじみのないことが多く書いていて、たまに鼻が白んでくる。正直なところ「それで?」と言った感じもある。しかしだからこそ、ありきたりでない読書論を求めている人には刺激的であるに違いない。
〓 どちらの本を読むべきか
さて、もし人にどちらかを薦めるとすれば、まずは『読書力』をおすすめしたい。著者が教育学者だけあって、読書そのものの本質が語られており、本をたくさん読む人にも、そうでない人にも役に立ちそうなことが書いてある。特にこれから読書を習慣化したいと考えている人にはうってつけだろう。
もういっぽうの『読書術』は、すでに「読書力」が身についている人におすすめである。なにしろこの手の本の中では古典的な部類に入る。読書の幅を広げるにはよい本だと思う。
いずれも「読書には人生を左右する力がある」ということを再認識させてくれる本である。秋の夜長が始まる前に、読んでおきたい本であった。
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