子供への虐待と大人の正義 『トガニ』 孔枝泳著
この本の記事を書くか否かでずい分迷ったのだが…。
韓国のろうあ学校での出来事。2005年のそう遠くはない昔の事件だ。
耳の聴えない子供たちに、学校の校長等数名が性的暴行を加えていたとされている。何とも恐ろしい話しである。そしてこれが現実の韓国で起きた事なのである。
著者である孔枝泳氏は、この事件をある新聞記事で知り、小説にして世に出す事を決心した。事件の発覚から4年後、この事件が人々の記憶から消えかけた頃、2009年の事である。
その後、この小説を読んだ韓国の映画俳優コン・ユが映画への出演を志願したという。善意の連携プレイなのかどうかはわからない。しかし、少なくともこの小説と映画が話題になったことにより、韓国では「トガニ法」が制定され、障害者の女性への虐待に対する厳罰化や、障害者や13歳未満への虐待に対する控訴時効が撤廃された。真実が明るみに出たことで、正義は残ったのである。
私は残念ながら、映画のほうは見ていない。しかし、小説を読むだけで十分だと思った。読んでいてつらい思いをする小説というのは、それが真実でないかぎり、心には沁みてこない。だから、その真実を知れば十分なのだ。何度も読み返す小説ではない。まして、単純に他人に進められるものでもないだろう。
だから、この記事をでは内容には触れず、その存在のみを紹介することにする。
それで、語りたいのは別なところだ。それは、韓国の国民の力といおうか。たった一人の小説家が世論を動かし、政治に影響を与え法律の制定まで成すという。
翻って、日本には同様のことがあったのか。あると思う。いまの反原発運動がそうだと思う。先の韓国の出来事は、子供の安全を守る法律として残された。日本での反原発運動も、市民レベルでの運動から国家を動かし、国民の安全を守るという結果に繋がるはずだ。
日本にもコン・ユのように、世論を動かす俳優が現れるだろうか。おりしも、今日は選挙の時。もし日本にいるとしたら、あの山本太郎だろうか。
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