官僚主導から政治主導へをもう一度 『人間を幸福にしない日本というシステム』カレル・ヴァン・ウォルフレン著
最近になって私は「ブロゴス」という言論発信サイトの記事に対するコメントを多くするようになった。ちょうど2012年12月ごろのことである。つまり、前回の選挙で自民党が大勝した頃だ。正直にいおう。私は民主党が大敗し自民党が大勝したことにがっかりした。当時の自民党の公約が「列島強靭化案」であり、それはどう考えても公共投資への資本注入による経済活性化、つまり本質的には従来の自民党の政策とは全く変わらなかったからだ。明らかに官僚主導である。その後この列島強靭化案なるものは全く見向きもされなくなった。かねてから、復興財源10兆円の投資をおこない、更にその上に10兆円を上乗せし、ところがこの10兆円が一体どういった使われ方をするのか、国民には全く知らされていない。
この予算を取ってから配分を考えるというというのも、以前と変わらない。予算はついたのだから、その内容を説明する必要などない、というのが従来と変わらない体制を示している。
日本政界の55年体制は変わらなかった。変えようとしたけど変えられなかった。国民は、民主党が日本を変えてくれるものと期待した。しかし、政官財の三位一体の勢力はそう簡単に崩れなかった。その後のストーリーは以前に記事「日本の政治とメディアの弊害 『誰が小沢一郎を殺すのか?』 カレル・ヴァン・ウォルフレン著」に書いたとおりだ。
おそらく、日本は自らの手で変わることはないだろうと思う。国家を支配する強固なシステムが出来上がっているからだ。その目に見えないシステムを解き明かしてくれているのがこの本『人間を幸福にしない日本というシステム』だ。初版は1994年である。そしてこの本は、先に示した「誰が小沢一郎を殺すのか?」のプロローグともなっている。
この本で著者は、日本の政治はもともと弱体化しているといっている。要するに官僚支配の国だというのだ。国民の代表たる国会議員が、国民の代表ではない組織体である官僚よりも弱いのだ。この状態が国民にとって好ましいことなのか。いやそれ以前に、この状態は民主主義を機能させることができるのか、はなはだ疑問である。
しかし、果たしてこのタイトルにあるように、この日本というシステムは人間を幸福にしないのだろうか。実のところ、私はそうではないと考える。日本人はそれなりに幸福だったのだ。そして、今まで幸福だった人びとがその幸福を我がものにしようとしがみついているだけだ。つまり既得権益というやつである。最大多数の最大幸福を維持している。やがてその幸福な人びとが減ったあとに、不幸な人びとが残るだろう。日本が変わるのはその時だと思う。
その時に、この本のタイトルは意味を持ってくる。いまでも、政治は国民の幸福を願うのではなく、国家という体制を維持するために機能している。言葉ではわかりにくいので図に表してみた。問題は、国民の圧力、つまり選挙の相手と、国民による報酬、つまり税金の行き先が異なることだろう。本来は、政治家がその使い道をコントロールできなければならなない。例えばメディアの場合はクライアントが企業である限り、企業からの圧力がかかる。しかし、官僚はどこからも圧力がかかることはない。これだから、国民の意見が反映されにくい。よって官僚にとっては、国民を幸福にする動機がないのである。これが、今後不幸な国民が増える中で、日本というシステムが人間を幸福になしえない理由である。
では、この体制を変えることは出来るのか。そのためには、まずメディア報道を鵜呑みにしないこと。そして、本当にその政治家が正しい政策を行なっているかを見極めることだ。そして何より、日本が官僚によって支配されている現状を知ることだと思う。
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