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あの年金はどこへ消えたのか 『年金詐欺』 森永秀和著

 厚生年金基金制度が近々廃止されるらしい。しかし、これによってはたしてこの複雑怪奇な年金制度上の問題は無くなるのだろうか。
 年金問題は根が深くしかも足が長い。過去の記録をたどれば様々な問題があることが判る。グリーンピアに代表される2004年の公的年金流用問題や、2007年の年金記録問題、年金未納問題、などなど。そもそも年金自体の制度上の問題は、これらによって表面化したのだが、年金財源が枯渇する問題については全く手付かずの状態と言ってよい。

 しかし、もっと大きな問題が年金横領の問題だ。社会保険庁の職員が手を染めたとされる横領のなかで、事件として発覚したものは氷山の一角だった。しかしやがてはこれも沙汰止みになってしまった。身内に対しては甘い処分であったとされているが、マスコミが騒がなければ、国民はまったく関心を持たないのだから仕方がないのだろう。
 このような現象は、大きなタライの中にあるカエルたちの住処が少しづつ干からびていくのに似ている。ゆでガエルならぬ、干からびガエルである。

年金は本当にもらえるのか? (ちくま新書)

 年金の制度上の問題は、以前読んだ『年金は本当にもらえるのか』でも鈴木亘氏が指摘している。その書評としてのブログ記事の表題に「こりゃ史上最大の詐欺事件だ!」と書いたとおり、私はこの現実を知って、これはもう国家的詐欺事件ではないかと思ったのだった。
 それがあろうことか、今回読んだ本の題名は『年金詐欺』である。

 この本では、まさに年金制度が国家的詐欺ではないかとの疑いを説いている。内容としては、制度の説明よりも、AIJ事件が中心だ。いわば年金資産消失の原因をAIJ事件にフォーカスしてレポートしているわけだ。

〓 この本『年金詐欺』でも払拭されない疑問とは

年金詐欺 AIJ事件から始まった資産消失の「真犯人」

 さて、この本を読むと、AIJ事件がどのような様相を呈していたかがわかる。それでも次の点が大きな疑問として残ったままだ。

 AIJ事件による損失額は委託を受けた資産のほとんどである約2000億円である。ここでの疑問は、もし仮に損失を埋め戻すためにリスクの高い投資を行なっていたとしても、抱える基金全額を投資によって全額を毀損するなどという事はありえないのではないか。ということだ。そして、これらの資金がどこに流れたのかは全く解明されていないどころか、どの新聞記事にも流出先を追求する姿勢が観られないのはいったいどういうことだろう。

 浅川の罪状は詐欺罪として15年の求刑が求められており、その判決が延期されている。

■時事通信
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2013100300772
公判は7月29日に結審していた。関係者によると、年金基金への被害弁償に関する証拠などを追加で調べるため、審理が再開されるという。

■日本経済新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG03041_T01C13A0CC1000/
浅川被告は初公判で起訴内容を全面的に認めたが、最終弁論で詐欺罪について無罪を主張。検察側は懲役15年を求刑していた。

■MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/131003/trl13100320540006-n1.htm
浅川被告らは17の年金基金に虚偽の運用実績を示し、傘下の証券会社を通じてファンドを水増し価格で販売して、計約248億円をだまし取ったとして詐欺と金融商品取引法違反(契約の偽計)の罪に問われている。

 本来であれば毀損した2000億円もの年金資金がどのように使われたかにより、横領もしくは着服の罪に問われるところである。ところが不思議なことに、検察はこの事件を詐欺事件として立件したのだ。詐欺事件であれば消失した資金の使い道は問われないかもしれない。

 AIJの年金詐欺事件に関連して、こんな事件も起きている。
「長野県建設業厚生年金基金、逃亡中の元事務長に賠償命令判決、年金掛金23億8000万円の巨額横領事件、2億10万円の賠償命令」
この事件は未解決のまま犯人が海外に逃亡していて足取りがつかめない状態だったが、つい先日やっと逮捕に至ったものだ(「長野県建設業厚生年金基金不明金 男の潜伏先を取材しました」FNN)。しかし、この事件でも結局横領された資金はどこへ消えたのか解らずじまいなのである。

〓 結局年金問題は一部しか明らかにされていない

 AIJ事件をきっかけとして、厚生年金を廃止し基金を国に返上する案が浮上している。しかし、これは制度上の失敗を民間の側に押し付けようとしているにすぎない。その証拠に供済年金は、なぜか厚生年金に統合されるのだ。こんなおかしな話があるだろうか?

 結局、私たちが知りうる年金問題はほんの一部分である。実際にはもっと多くの問題が潜んでいると思って間違いないのではないだろうか。国政に関わる事件の殆どはこのようにどこかでフィルタリングされながらそのほんの一部が知らされるというのが、この国ではごく当たり前のことなのかもしれない。しかし、例えその一部であっても、事実を事実として私たちは知るべきだろうと思う。

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