会計とは何かがよく解るおもしろ小説 『会計天国』 竹内謙礼、青木寿幸、共著
副題:今度こそ最後まで読める、会社で使える会計ノウハウ
読書の目的は人それぞれでありまたその時によって異なるものです。例えば心が乾いた時は小説を読むがいいし、何か新しいことをしようとするときはハウツー本などがいい。でも、両方楽しめないか?と考える欲張りな人がいたりします。かくいう私もその一人なのかもしれません。
最初私はこの本のタイトルから、会計の知識を使って、ウハウハ状態になるほど金儲けをしたという、言って見れば「会計ヘブン」的な話か、と思っていました。表紙に現れている男の影が、なんとなく世渡り上手の成功者に見えたのです。法律ギリギリの手練手管でがっぽり金儲けをする話、というそんなイメージでした。
読んでみたところ少し違いました。実際に主人公は会計コンサルでポルシェを乗り回しているという設定なので、近いことは近い。しかし、天国の意味は運に恵まれた成功者ではなく、ポルシェに乗って事故を起こして、天国に行くという話なのでした。
主人公は、天国で天使に遭遇して、難題をふっかけられます。その難題というのが、経営で困っている5人を、主人公が現生の誰かに乗り移って、経営の手助けをするという話でした。
経営の手助けをする時に、必ず会計コンサルタント的な手法を使うわけです。そこで、ストーリーの中に会計の話がふんだんに登場するという、かなり無理な設定ではあります。しかし、設定をハチャメチャにすることで小説としては読みやすくなっていると思います。もし、ありきたりの設定の中で会計の話が出てきても、その時点で小説を読もうという気力が萎えそうですからね。
私も簿記の勉強をしているので多少の肥やしになるかと思っていました。しかし、簿記の知識という意味では得られるものはあまりないかもしれません。むしろ、会計つまり、損益計算書や貸借対照表、あるいはキャッシュフローの読み方が身につくと思います。簿記学がこれらの帳票を作成するための知識だとすると、この本はその原理を知った上で、帳票を読みながらいかに経営的判断をするかというノウハウをみにつけるためのものであると言えます。
つまり、簿記の意味合いというか、なぜBSやPLのフォーマットが現在の形になっているかを知るためには良い本。そのため簿記会計の知識がないと、読むには少々辛いかもしれません。
正直にいうと、この本は知識を習得するために、真剣に読む本ではないですね。もしそう言った所望があるなら、以前紹介した「会計の基本」や「管理会計の基本」をお勧めいたします。
最後に、『会計天国』は実は小説としてそこそこ良く出来ていると思います。最後まで読むと、それなりによくできた小説であることの感慨にふけることができる、かもしれません。
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