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『世界最高のプレゼン術』 に関する2冊を比較する

TEDトーク 世界最高のプレゼン術 世界最高のプレゼン術 World Class Speaking (ノンフィクション単行本)

[A]『世界最高のプレゼン術』 ウィリアム・リード著(左)
[B]『TEDトーク 世界最高のプレゼン術』 ジェレミー・ドンバン著(右)

 最近新入社員に部署の説明をする機会があって、どうやったら分かりやすい説明ができるかを研究するために読んだ本です。
 2冊とも実に分かりやすい内容。どちらもTEDというプレゼンテーションの番組を題材にしているだけに、分かりやすくないわけがありません。ではありますが、やはりこの2冊の本はそれぞれの特徴があるので、そこを解説しておきたいと思います。
ズバリ、分かり安いのは[A]です。理由は下記。

  1. 手法が分析分類されている
  2. 図解が多用されている
  3. 著者は日本をよく知っており、日本の状況を加味した説明になっている

 [A]は、プレゼンテーション手法を体系的に個別に述べているのが特徴と言えます。たとえば、ストーリーを作る手法をとして、以下のような解説があります。

114ページ>ストーリーのネタとなる「5F」
 面白いストーリーをつくろうと思っても、なかなかアイデアが浮かばないという人もいるかもしれません。そのような人には、次の5つの視点から考えることを薦めます。
①First(初体験)
②Fault(欠点・短所)
③Fear(恐怖)
④Failure(失敗)
⑤Frustration(不満)

 一方で[B]の方は、本の構成自体がストーリー性を重視しており、全体が一連の流れの中で解説されています。ストーリーに関する解説も手法的なものではなく、その中核となる概念を述べています。

36ページ>「何のために」を最初に、「何をするのか」は最後に語れ
 サイモンの“秘密”とは──世界中に無料で配信されていますから、もはや、“秘密”とは言えませんが──“ゴールデンサークル”と呼ばれている概念です。彼はとても説得力のある説明を展開しています。
──普通の人や普通の企業は「何をするか」から話を始め、運が良ければ「どうやって実行するか」をほんの少し語ってくれる。対照的に、偉大なリーダーや優れた企業は、「何のためにそれをするのか」から話を始め、つぎに「どうやって実行するか」を語る。「何をするか」は最後に取っておくんだ。
 このテクニックが、すなわち、“ゴールデンサークル”です。サイモンが好んで例に挙げるのはアップルです。
 アップルの「WHY(何のために)」は、「人々に現状への挑戦をしてもらうため」。「HOW(どうやって)」は、「消費の主流となる多くの人々に手の届く価格で、すばらしい日常的なデジタル体験を設計(提供)することによって」。そして、アップルが行う「WHAT(何を)」は、さまざまなサイズ、形、色のコンピュータやスマートフォンを作ることです。

 さて、私がこの2冊の本を読んだ結果、確かに新入社員への部署紹介はある程度成功を収めたようです。もっとも役に立ったのは、やはり説明にストーリー性を持たせたことです。この手法は、説明している方も次の言葉を発しやすいのです。いわゆる、意味記憶ではなく、エピソード記憶で説明するべきことを手繰ることができるので、スライドをめくるときも、次に何を説明するべきかが想起しやすくなるようです。
 もうひとつ取り入れたのは、できる限り聞き手が共感を持てるような話をすることです。実は、今回の聞き手、つまり新入社員は研修中だったのですが、私が新入社員だったころと同じ研修会場を使っていたので、そのことを冒頭で話しました。つまり、互いに共通の場所で新人研修を受けた仲間であるという共感を持ってもらおうと考えました。
 そして、なんといっても必要性を感じたのはユーモアの重要性です。冒頭でアイスブレーク的にユーモアを交えた話をしましたが、実はこれに7分ほどかけてしまいました。前段としてはちょっと長すぎたと反省しています。

それぞれの本の印象を一言で述べておきます。

  • [A]の印象 TEDを題材としたプレゼンテーションマニュアル
  • [B]の印象 TEDを題材としたプレゼンテーション論

 ちなみに、両方読むとすれば、最初に[B]を読み次に[A]を読むべきだと考えます。なぜなら、この2冊は重複している論点が多数あり、マニュアル的な[A]の方が重複部分を飛ばし読みしやすいからです。

 なんといっても二つの“世界最高”を比較する機会はそうそうあるものではありません。この二冊は読み比べのために出版されたのだ、と思いたくなります。どちらの本が分かりやすいか、そしてそれはなぜなのかを読み比べることで、ますます説明能力が身につくのではないか、と思います。

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