科学を真面目にバカバカしく 『感じる科学』 さくら剛著
ものごとを人に伝える時にどうしたら面白おかしく伝えられるのか、ということを研究するためにこの本を読みました。
そもそも、物事を人に伝えるためには、伝えようとしている内容そのものに興味を持ってもらわねばなりません。著者は、どうやったら興味を持ってもらえるのかということを突き詰めた結果、それが説明のバカバカしさであると言っているようです。
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でも考えてみてください。
宇宙のこと、時間のこと、生命の進化のこと、そういうものには誰もが少しは興味を持っているはずなんです。だって、自分が生きているこの世界のことなんですから。
でもそれをちゃんと勉強することに抵抗があるのはなぜかというと、そえは教科書や専門書がまったくバカバカしくないせいです。
おっと、勘違いされそうなのでもう一度説明しますが、説明がバカバカしいといっているのではありません。バカバカしく説明をするべきであると言っているのです。うーん、なんだかこの説明自体がバカバカしく思えてきましたので次に進みます。
バカバカしさについては放っておいて、人に伝わる説明には何が必要なのかを考えると、なんといっても説明する側と説明を受ける側の共通事項で例を用いること。要するに読者が知っている例を引き合いに出すということでしょう。そういう意味で言うと、この本には、のび太くんとかマ○コデラックスが出てきます。ですから、たとえこの本を読んでいる方が詳しくわかっていなくても、わからせようとする努力が伝わってきて同情と共感を誘うと思います。
しかし、こういった試みはこの本が最初ではない様な気がしました。そうそう、それはかつて私が読んだ『宇宙を織りなすもの』でも、著者であるブライアン・グリーンが使った手法でもあります。あの本も読みやすく分かりやすく書いていたけど、そのためにザ・シンプソンズを登場させていたのでした。ですからこの本は、『宇宙を織りなすもの』でのザ・シンプソンズを登場させた解説部分をノーカットでコラージュした感じ、と言って良いでしょう。
この本を読むことで、科学に関する深い理解が得られるのかというと、かなり眉唾ものです。やはり、「感じる」ことと「理解する」ことはだいぶん違います。
しかし、科学に対する興味というのは、やはり「感じる」ことから始まると言ってよいでしょうね。要するに、そこにあるのは最初に不思議があるわけです。「何で?」という疑問ですね。この「何で?」という疑問に対しては、「解った!」と感じることが重要なのでしょう。たとえ深い理解に至らなくとも、何となく「解った!」と「感じる」ことが重要なのです。
この本をお勧めするのは次のような方々です。
1.科学にあんまり興味がないけど、ミステリー小説は好きだ、という人。
2.小保方さんの事件には注目したけど、STAP細胞とかって分からなかった人。
3.大学受験を控えているのだけど、理系がどうも苦手な人。
4.小さなことにくよくよしているけど、そこから脱却したい人。
最後の、小さなことにくよくよしてしまっている人は、この本を読むと、素粒子とかからビックバンの話の展開を読んで、自分の周りにあったくよくよがあまりに小さく見えてくるので、もうくよくよしなくても良くなるんじゃないかと思います。
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