語りの本質をツカもう! 『ツカむ!話術』 パトリック・ハーラン著
前回までの記事で、プレゼンテーションに関する本とバカバカしい説明に関する本を紹介しました。今回は、はっきり言って自己表現の王道と言っていい。言葉による説明の技術に関する本です。
この本は、日常の会話にも使えるし、プレゼンテーションにも使える。はたまた、文章表現にも使えると思います。
え?。この記事には生かされていないのではないかって?
そうです。この本、奥が深いので、そんなに簡単に使いこなせる内容ではありません。ま、そういう言い訳を可能にする本でもあるわけですが………
所でみなさん、今まで何かを説明しようとしたときに、どうも上手くいかないことってないですか。どうやったら自分の主張が相手に理解してもらえるのか。私のようにブログ記事を書く人間にとっても、これは喫緊の課題ですよね。こういう身近な課題に対する回答がこの本には書いてありますよ。
それでは、その内容をかいつまんで説明します。
著者のパックンことパトリック・ハーラン氏は、コミュニケーションにより相手を説得するための心構えを三つに分類して説明しています。それは、エトス、パトス、そしてロゴス、です。
〓 エトスは信頼
エトスはエートスとか呼ばれたりもしますが、要するに人格的な信頼をもたらす説明の仕方をさします。エトス度を上げるためには、実績、経験、地位などに根付いた何かを獲得する必要がありますね。うーん、難易度が高い。しかし、これはやはり本人の努力によるモノ。口先だけだったり、上っ面の話はだれも信用しない。要するに当たり前のことです。しかし、相手が自分の実績を知らなかったり、言葉の端々に重みを持たせる話し方をしなかったりした場合、実際には人格的に優れた人でも、話の内容に信憑性を持たせることはできません。それに、身なりや所作なども、やはり第一印象としての信頼に関わってきますよね。ですから、初対面の人に何かを説明しようとするするとき、まずはこの「エトス」に訴える必要があるわけです。
〓 パトスは感情
パトスは感情に訴える手法。パッションです。最近は安倍首相が集団的自衛権の必要性を訴える場面で使っていましたね。しかし使い方を誤ると号泣会見のように逆効果になってしまうかもしれません。
パトスの用法は要するに共感です。「この人々の命を助けなくても良いのでしょうか」とか、「愛は地球を救うのです」というのは「パトス」の用法です。
〓 ロゴスは論理
ロゴスは要するにロジックのこと。ロジカルに説明するのはビジネス分野では必須ですね。なぜこの製品を買うべきなのかを説明するときに「この製品は地球を救うのです」などと訴えたところで、「えっ」ってなりますよね。ロゴスはエトスやパトス以前に重要な要素だと思います。でも、話術に関する本では、特にビジネス書のたぐいでは、このロゴスばかりが説明されて、結局説明が杓子定規になったりする場合があります。ですから、この本ではロゴスは話術の一つの要素として扱っているのですね。
もちろん、この三つ以外にも池上彰さんとの対談があり、そして本書の後半では実践編として具体的な活用例や考え方が示されています。ということで、この本、実は前回と前々回に紹介した本以上に、皆さんに読んでいただきたい、と思わせる本です。出版は2014年4月であり、ごく最近なのであるが、何故かあまり話題になっていないのが残念。しかし、よい本というのはそういうものなのかもしれませんね。電子版が出ているのでKindleをお持ちの方は電子書籍での購入がおすすめです。
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