地震の後には戦争がやってくる 『瀕死の双六問屋』 忌野清志郎著
なぜかこの本を読んだ。この本を読むきっかけがなんだったか、なんて覚えていないけど、いや思い出した。確か誰かがブログで忌野清志郎のこの本に載っている文章を引用したのだった。思い出したぞ、確か忌野清志郎は戦争に反対していたし原発にも反対だったのだ。引用していたのは次の文章だったはずだ。
157ページ
地震の後には戦争がやってくる。軍隊を持ちたい政治家がTVででかい事を言い始めてる。国民をバカにして戦争にかり立てる。自分は安全なところで偉そうにしているだけ。阪神大震災から5年。俺は大阪の水浸しになった部屋で目が覚めた。TVをつけると5カ所ほどから火の手がのぼっっていた。「これはすぐに消えるだろう」と思ってまた眠った。6時間後に目が覚めると神戸の街は火の海と化していた。この国は何をやってるんだ。復興資金は大手ゼネコンに流れ、神戸の土建屋は自己破産を申請する。これが日本だ。私の国だ。とっくの昔に死んだ有名だった映画スターの兄ですと言って返り咲いた政治家。弟はドラムを叩くシーンで僕はロックン・ロールじゃありませんと自白している。政治家は反米主義に拍車がかかり、もう後戻りできやしない。そのうち、リズム&ブルースもロックも禁止されるだろう。政治家はみんな防衛庁が大好きらしい。人を助けるとか世界を平和にするとか言って実は軍隊を動かして世界を征服したい。
俺はまるで共産党員みたいだな。普通にロックをやってきただけなんだけど。そうだよ、売れない音楽をずっとやってきたんだ。何を学ぼうと思ったわけじゃない。好きな音楽をやっているだけだ。それを何かに利用したいなんて思わない。せこい奴らはちがう。民衆をだました、民衆を利用していったい何になりたいんだ。予算はどーなってるんだ。予算をどう使うかっているのはいったい誰が決めてるんだ。10万円のために人を殺す奴もいれば、10兆円とか100兆円とかを動かしている奴もいるんだ。いったいこの国は何なんだ。俺が生まれて育ったこの国のことだ。君が生まれて育ったこの国のことだよ。どーだろう、……この国の憲法第9条はまるでジョン・レノンの考え方みたいじゃないか? 戦争を放棄して世界の平和のためにがんばるって言ってるんだぜ。俺たちはジョン・レノンみたいじゃないか。戦争はやめよう。平和に生きよう。そしてみんな平等に暮らそう。きっと幸せになれるよ。
この本、実はTVブロスに載せた忌野清志郎のコラムをまとめたものだ。そしてここに紹介した文章は、ブロスではボツ原稿になった文章だった。タイトルは「日本国憲法第9条に関して人々はもっと興味を持つべきだ」という長い長いタイトルだ。忌野清志郎という人は普段は普通の人だったらしいけど、この本を読む限りはそうではなさそう。何と言ってもロックだったんだね。文章がハチャメチャなところもロックを感じさせてくれるし、文章の最後に決めゼリフを使いたがるのもロックなんだろうと思う。といいつつ、僕はロックをほとんど聴かないし、カラオケで歌うのはいつも演歌なんだけど。
音楽を聴く時はほとんどジャズだし、たまにサザンとかドリカムとかしか聴かない。軟弱なんだ。よく考えたら、サザンが出たあたりから日本のロックは廃れたような気がする。日本にはロックは似合わないよ、特に今となっては。反体制的な歌詞を歌えばすぐ左翼にされてしまうし。みんな親方日の丸になってしまって、反体制的な意見を言うと、非国民扱いされてしまう。
つまり、忌野清志郎の予言はバッチリ当たっているということだ。政治家は民衆を騙そうとしているのがはっきりわかるのに、マスコミはそこをつつかない。マスコミも政治家も最近では経済界も民衆を騙そうとしている。そうやっていつか民衆が反駁して政治不信に陥って、やがて軍部が共産党員と一体化して、どんどん軍国主義化していったのが戦前の日本だったのだけど、また同じことをやりそうだな日本国民は。
もうロックは瀕死の状態だ。双六問屋だけじゃなかったぞ瀕死なのは。奴は15年も前に気づいていてそいつを本にして今の俺らに知らせてくれているんだ。しかし、そんなことを考えていてもしょーがない、今夜はドリカムのべたべたの曲を聴いて寝ることにしよう。
それじゃあ、おしまいのページにて、また会おう。
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