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経済成長という幻想、平和憲法維持というはかなさ 『だから日本はズレている』 古市憲寿著

だから日本はズレている (新潮新書 566)

 以前読んだ『絶望の国の幸福な若者たち』。あの本は時代の違いを背景として、おじさんたちによる若者論がどのようにずれているかを語っていた。過去から現在に至る時系列の中で、どのようにして若者論が変わってしまったのか。つまり、高度成長期における若者論を現代の格差社会の中で語るのは間違っている、という論調だった。
 そして、今回はまた切り口を変えて語っているのだ。日本という国家に対する見方がおじさんと若者では、すっかりずれてしまっている、と言うわけだ。
 おじさんである側から読んでも納得できる部分が多い。なぜなら、この本の中に登場するおじさんたちとは、日本の国家の中枢となる政府であり政党であったりするからだ。おじさんは結局それらのメタファーとして語られているのだ。

 それでも、ある側面では理解できない部分もある。例えば、以下のような。

212ページ
 現在の多くの20代はもはやバブルをを知らない。物心ついた時には日本の経済成長は終わっていて、彼らは多感な青春時代を平成不況と共に過ごしてきた。
 かといって、現代の若者は日本の貧しさを知っているわけではない。むしろ、生まれた時から充分すぎる物質的な豊かさを享受してきた。社会が成長していくことに対してリアリティは持てない一方で、彼らにとって日本の豊かさはデフォルトなのだ。

 実は、この部分を20代である若者に聞いてみた。実際に読み聞かせてその感想を聞いてみたのだ。その答えを聞いて納得いった。彼はこう答えたのだ。
「確かに僕らにとって豊かさはデフォルトだね。そういのは昔の人には理解できないかもしれない。うーん、例えばだけどね、昔の人から見れば憲法9条を改正するというのが非現実的に思えるでしょう。9条を改正するということに実感がわかないというか。現在の若者たちが置かれている立場をおじさん達が理解できないというのは、それと同じことじゃないかな」

 なるほど、そういう事なのである。私たちは平和憲法があるおかげで高度成長期を享受してきた。そのことが前提となっていたのだ。今は、高度成長期ではないし、今後も経済成長を期待できない。結局、現在の若者にとっては経済成長などないことが前提なのだし必要性を感じないということなのか。
 つまり、見えているベクトルが変わってしまっている、ということなのだろう。これはある意味で、若者に組み込まれた新たなベクトルである。彼らが追求する幸福というのは経済成長ではない。そして平和憲法の維持も彼らの幸福には寄与することが、実感としては持てないのである。
 いや、まてよ、むしろこんな風に分かったつもりになることが、つまり現代の日本の社会を若者たちとはずれた視点で見ていることに他ならないのかもしれない。そう思いながら、おしまいのページまで読み進むのも良いかもしれない。

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