読書:思考の炭水化物

ビジネス、ハウツー、ノウハウ、資格

『ビジネス実務法務検定2級』を受けてきました

 だいぶん以前のことではあるが、昨年末、つまり2014年12月7日に「ビジネス実務法務検2級(R)検定試験」なるものを受験してきた。この資格、おそらく商工会議所としては簿記検定に続く資格試験として定着させたいところなのであろうが、あまり知名度はないようだ。今回は36回目という歴史の浅さもあるかもしれない。そもそも受験者の人数も少なく、ゆえに私の受験場所は武蔵野商工会議所のビルの中であった。
 実際の受験人数は一昨年(2013年)の実績で、14,173人、合格者数は6,469人、合格率は45.6%である。つまり受験者の半数近くが合格する試験なのである。最初はこのデータをみて、思いっきり高をくくっていた。しかし、実際に受験勉強を始めると、これはなかなか手ごわい試験なのである。
 問題は、問題自体の難易度ではない。とにかく読み解くための文章量が多いのだ。速読ができる人には、この試験は大いに有利かも知れない。しかし、普通のスピードで読んでいては、おそらく回答時間を使いきってしまうはずだ。
 設問の数量は、全部で40問。その40問にはそれぞれ5つの選択肢がある。個々の選択肢に対して正誤を判断しなければならない。したがって、試験にあたっては、200の文章を読み進みながら正誤の判断を繰り返すことになる。
 制限時間は2時間、1文につき持ち時間は36秒である。一般的な読書スピードは1分間に800文字と言われている。36秒あれば400文字くらいは読めるだろう。実際の問題文は一つの選択肢が150文字程度で構成されている。なんだか余裕があるようにも思えるが、考えながら読むからそれなりに時間がかかる。繰り返し読まなければ理解できないものあったりする。だから時間が足りなくなるのだ。

 ちなみに、今回私が回答に要した時間は105分。そして、マークシート回答用紙への転記に5分かかり、残った時間は15分だった。残りの10分間で見直しを行い、1問修正をした。この修正が功を奏して、自己採点では70点である。転記にミスがければ合格かも知れないが、転記ミスを確認する時間がなかったから自信がない。後は座して待つのみといったところか。

 さて、この資格試験の学習方法は実にオーソドックスなものとなる。用意するのは過去問題集と参考書をそれぞれ一冊でよい。問題集はネイティブに中央経済社が発行する「ビジネス実務法務検定試験 2級公式問題集」が良いとされている。この本には過去3回分の問題と、カテゴリーごとの独自問題集が掲載されている。
 参考書の方は、もし論点をネットで調べるつもりなら、なくても大丈夫。しかし、法律は複雑だ。単に問題を解いて不明な点を場当たり的に消化していたのでは、その周辺からの出題には対応できなくなってしまう。だから、やはり参考書があったほうが良い。先の公式問題集にはセットで販売されている参考書への参照先が書かれている。本来であれば、公式問題集と参考書をセットで購入するのがよい。

 やはり問題集だけでは心許ない。そこで私は、参考書を追加買いすることにした。書店で公式テキストを他社のテキストと見比べてみた。と、どうも買うつもりだった公式テキストは見栄えがしない。如何にも読みづらい。イラストなどはほとんどない。隣にあった公式ではないテキストと開いてみるとどうやらこちらの方が分かりやすそうであった。ということで、私は翔泳社の『ビジネス実務法務検定試験(R)2級 完全合格テキスト』を購入することにした。
 実はこの参考書を購入した理由はもう一つあった。リアルの書店では買わずにAmazonで調べると、なんと珍しいことにKindle版が売られていたのだ。しかも値段は紙版の半額である。Amazonサイトに一件だけついていたコメントには「この本は読みづらくイラストもない」と書いてあったが、これは間違いだ。少なくとも私が書店で他の参考書と比べた限りでは最も読みやすそうだった。もちろん即決で購入した。
 そもそも分厚い参考書を持ち歩くのは辛い。それに、この参考書を辞書的に使うつもりはなく、読み物として読んでみたかったのだ。その方が立体的に知識を習得できる。この本はうまくまとめられていて、読んでいて飽きることはなかった。イラストも必要十分に掲載されている。電子書籍なら、試験後もいつでも取り出して読むことができる。いわゆる実務上の参考書としてはすこぶる良い。

 もちろん、電子書籍であることによる欠点もある。この唯一のKindle版参考書はテキストデータを持っていないのだ。もちろんリンク情報も掲載されていなければ、重要箇所にマーキングしたり、通常のKindleでは可能な栞をつけることもできない。コメントを追記することも、メモをつけることもできないのだ。それでも、iPadに入れて常に持ち歩くことができる利点は大きい。受験の時のみ、一時しか使わないということであれば紙版で十分であるが、今後も常に持ち歩き必要な時に参照できるということを考えれば、Kindle版の方が利用価値がはるかに大きいのだ。

 結論を述べると、ビジネス実務法務検定2級を受けるなら、参考書としては翔泳社のものがおすすめである。ただし一点だけ非常に残念なことがある。それは、Kindle版の値段がなぜか半額ではなく紙版とほぼ同じ値段になってしまったことだ。そして、最新版の2015年版はKindle版が出版されるのかわからないのである。いつか最新のKindle版が再び半額で販売されることを願ってやまない。

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本当は他人に感謝されたいのでは? 『他人を攻撃せずにはいられない人』 片田珠美著

 一言で言うなら、読んでいて気持ち悪い本なのである。最初から最後まで、誰がどのように攻撃し、どのように貶められ、そしてどう対処すれば良かったか、という場面が延々と続くのである。ドロドロのぐちゃぐちゃなのだ。もう少し統計的な数値や、年齢あるいは性別などによる相関関係みたいなものを検証できなかったのだろうか、と思ってしまう。残念ながらこの本では攻撃的な人々の心理の裏にあるものにはあまり触れていない。
 同様の本には『他人を見下す若者達』(2006年、速水敏彦著)がある。見下すのも攻撃するのも、根に持っているものは同じ支配欲もしくは自己実現欲求であろう。結局は自分の人生に意義を見出し、「私は確かにここに居るのだ」という存在の形を人々に受け入れてもらいたいだけではないのだろうか。

 つまり、彼らのその表現が通常とは異なっているのだ。本来は他人を見下すのではなく自らが成功を修めるべきであろうし、他人を攻撃するのではなく他人から学ぶべきなのである。
 おそらくその奥底にあるのは、他人よりも楽をしたいということ、または他人よりも楽な人生こそが成功である、という思想にあるのかも知れない。これは、2000年ごろからブームになったビジネス書の乱発からも伺える。「楽して〜できる」「簡単に〜できる」など、苦労せずにお金を儲けることがあたかも成功の条件であるかのように私たちは刷り込まれてきた。そのような短絡的な成功志向が、人一倍努力して勝ち取る成功ではなく、人を貶めて相対的に自らに権威付けをする成功に、人々を駆り立てているのかもしれない。

 しかし、この本、ドロドロのぐちゃぐちゃがまた何とも人を惹きつけるのであろう。どうしても、そのぐちゃぐちゃの中に一点の光明や、何か美しいものが隠れていやしないかと、目を凝らしたくなるのだ。それは時に攻撃的になってしまう自分を肯定するためであるのかもしれない。かくいう私は、他人が自分よりも楽をしていると思うたびに、ついつい腹を立てたりしている。冷静に考えるなら、人のために苦労をしても、その事を楽しめるのなら本来はその人生は成功なのではないだろうか。少なくとも、人に頼られ感謝される数を成功の指標にしなければ、この世の中はなんとも息苦しいものになるに違いないと思いながら、おしまいのページを読み終えたのである。

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語りの本質をツカもう! 『ツカむ!話術』 パトリック・ハーラン著

ツカむ! 話術 (角川oneテーマ21)

 前回までの記事で、プレゼンテーションに関する本バカバカしい説明に関する本を紹介しました。今回は、はっきり言って自己表現の王道と言っていい。言葉による説明の技術に関する本です。
 この本は、日常の会話にも使えるし、プレゼンテーションにも使える。はたまた、文章表現にも使えると思います。
 え?。この記事には生かされていないのではないかって?
 そうです。この本、奥が深いので、そんなに簡単に使いこなせる内容ではありません。ま、そういう言い訳を可能にする本でもあるわけですが………

 所でみなさん、今まで何かを説明しようとしたときに、どうも上手くいかないことってないですか。どうやったら自分の主張が相手に理解してもらえるのか。私のようにブログ記事を書く人間にとっても、これは喫緊の課題ですよね。こういう身近な課題に対する回答がこの本には書いてありますよ。
 それでは、その内容をかいつまんで説明します。

 著者のパックンことパトリック・ハーラン氏は、コミュニケーションにより相手を説得するための心構えを三つに分類して説明しています。それは、エトス、パトス、そしてロゴス、です。

〓 エトスは信頼

 エトスはエートスとか呼ばれたりもしますが、要するに人格的な信頼をもたらす説明の仕方をさします。エトス度を上げるためには、実績、経験、地位などに根付いた何かを獲得する必要がありますね。うーん、難易度が高い。しかし、これはやはり本人の努力によるモノ。口先だけだったり、上っ面の話はだれも信用しない。要するに当たり前のことです。しかし、相手が自分の実績を知らなかったり、言葉の端々に重みを持たせる話し方をしなかったりした場合、実際には人格的に優れた人でも、話の内容に信憑性を持たせることはできません。それに、身なりや所作なども、やはり第一印象としての信頼に関わってきますよね。ですから、初対面の人に何かを説明しようとするするとき、まずはこの「エトス」に訴える必要があるわけです。

〓 パトスは感情

 パトスは感情に訴える手法。パッションです。最近は安倍首相が集団的自衛権の必要性を訴える場面で使っていましたね。しかし使い方を誤ると号泣会見のように逆効果になってしまうかもしれません。
 パトスの用法は要するに共感です。「この人々の命を助けなくても良いのでしょうか」とか、「愛は地球を救うのです」というのは「パトス」の用法です。

〓 ロゴスは論理

 ロゴスは要するにロジックのこと。ロジカルに説明するのはビジネス分野では必須ですね。なぜこの製品を買うべきなのかを説明するときに「この製品は地球を救うのです」などと訴えたところで、「えっ」ってなりますよね。ロゴスはエトスやパトス以前に重要な要素だと思います。でも、話術に関する本では、特にビジネス書のたぐいでは、このロゴスばかりが説明されて、結局説明が杓子定規になったりする場合があります。ですから、この本ではロゴスは話術の一つの要素として扱っているのですね。

 もちろん、この三つ以外にも池上彰さんとの対談があり、そして本書の後半では実践編として具体的な活用例や考え方が示されています。ということで、この本、実は前回と前々回に紹介した本以上に、皆さんに読んでいただきたい、と思わせる本です。出版は2014年4月であり、ごく最近なのであるが、何故かあまり話題になっていないのが残念。しかし、よい本というのはそういうものなのかもしれませんね。電子版が出ているのでKindleをお持ちの方は電子書籍での購入がおすすめです。

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『世界最高のプレゼン術』 に関する2冊を比較する

TEDトーク 世界最高のプレゼン術 世界最高のプレゼン術 World Class Speaking (ノンフィクション単行本)

[A]『世界最高のプレゼン術』 ウィリアム・リード著(左)
[B]『TEDトーク 世界最高のプレゼン術』 ジェレミー・ドンバン著(右)

 最近新入社員に部署の説明をする機会があって、どうやったら分かりやすい説明ができるかを研究するために読んだ本です。
 2冊とも実に分かりやすい内容。どちらもTEDというプレゼンテーションの番組を題材にしているだけに、分かりやすくないわけがありません。ではありますが、やはりこの2冊の本はそれぞれの特徴があるので、そこを解説しておきたいと思います。
ズバリ、分かり安いのは[A]です。理由は下記。

  1. 手法が分析分類されている
  2. 図解が多用されている
  3. 著者は日本をよく知っており、日本の状況を加味した説明になっている

 [A]は、プレゼンテーション手法を体系的に個別に述べているのが特徴と言えます。たとえば、ストーリーを作る手法をとして、以下のような解説があります。

114ページ>ストーリーのネタとなる「5F」
 面白いストーリーをつくろうと思っても、なかなかアイデアが浮かばないという人もいるかもしれません。そのような人には、次の5つの視点から考えることを薦めます。
①First(初体験)
②Fault(欠点・短所)
③Fear(恐怖)
④Failure(失敗)
⑤Frustration(不満)

 一方で[B]の方は、本の構成自体がストーリー性を重視しており、全体が一連の流れの中で解説されています。ストーリーに関する解説も手法的なものではなく、その中核となる概念を述べています。

36ページ>「何のために」を最初に、「何をするのか」は最後に語れ
 サイモンの“秘密”とは──世界中に無料で配信されていますから、もはや、“秘密”とは言えませんが──“ゴールデンサークル”と呼ばれている概念です。彼はとても説得力のある説明を展開しています。
──普通の人や普通の企業は「何をするか」から話を始め、運が良ければ「どうやって実行するか」をほんの少し語ってくれる。対照的に、偉大なリーダーや優れた企業は、「何のためにそれをするのか」から話を始め、つぎに「どうやって実行するか」を語る。「何をするか」は最後に取っておくんだ。
 このテクニックが、すなわち、“ゴールデンサークル”です。サイモンが好んで例に挙げるのはアップルです。
 アップルの「WHY(何のために)」は、「人々に現状への挑戦をしてもらうため」。「HOW(どうやって)」は、「消費の主流となる多くの人々に手の届く価格で、すばらしい日常的なデジタル体験を設計(提供)することによって」。そして、アップルが行う「WHAT(何を)」は、さまざまなサイズ、形、色のコンピュータやスマートフォンを作ることです。

 さて、私がこの2冊の本を読んだ結果、確かに新入社員への部署紹介はある程度成功を収めたようです。もっとも役に立ったのは、やはり説明にストーリー性を持たせたことです。この手法は、説明している方も次の言葉を発しやすいのです。いわゆる、意味記憶ではなく、エピソード記憶で説明するべきことを手繰ることができるので、スライドをめくるときも、次に何を説明するべきかが想起しやすくなるようです。
 もうひとつ取り入れたのは、できる限り聞き手が共感を持てるような話をすることです。実は、今回の聞き手、つまり新入社員は研修中だったのですが、私が新入社員だったころと同じ研修会場を使っていたので、そのことを冒頭で話しました。つまり、互いに共通の場所で新人研修を受けた仲間であるという共感を持ってもらおうと考えました。
 そして、なんといっても必要性を感じたのはユーモアの重要性です。冒頭でアイスブレーク的にユーモアを交えた話をしましたが、実はこれに7分ほどかけてしまいました。前段としてはちょっと長すぎたと反省しています。

それぞれの本の印象を一言で述べておきます。

  • [A]の印象 TEDを題材としたプレゼンテーションマニュアル
  • [B]の印象 TEDを題材としたプレゼンテーション論

 ちなみに、両方読むとすれば、最初に[B]を読み次に[A]を読むべきだと考えます。なぜなら、この2冊は重複している論点が多数あり、マニュアル的な[A]の方が重複部分を飛ばし読みしやすいからです。

 なんといっても二つの“世界最高”を比較する機会はそうそうあるものではありません。この二冊は読み比べのために出版されたのだ、と思いたくなります。どちらの本が分かりやすいか、そしてそれはなぜなのかを読み比べることで、ますます説明能力が身につくのではないか、と思います。

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ウェブ進化論のその後の進化 『ウェブとはすなわち現実世界の未来図である』 小林弘人著

ウェブとはすなわち現実世界の未来図である (PHP新書)

 書籍の題名からは内容を想像しにくい。むしろ「ウェブ」というキーワードを見た時に、この書籍の論点は古いのではないかと疑ってしまう。もしこの本が、インターネットの黎明期について語っているのであれば、ビジネス書としてではなく歴史書と見なすべきかもしれない。
 そう思いながら読み始めたのだが、この本は歴史書でもなければ技術書でもない。どちらかというと、梅田望夫氏が書いた『ウェブ進化論』の続編と言えるかもしれない。現実社会を模倣しながら発展したWeb2.0が、今は現実社会と融合しつつある。今後は、現実社会がウェブをコピーするだろうと、著者である小林氏は予測している。

 小林氏がこの書籍のなかで一貫して述べているのは「ヒューマン・ファースト」ということだ。つまり、インターネットによって趣味的ビジネスの共創が可能となった、あるいは、中抜きによって消費者と生産者が直結されるようになった、そして、SNSによって空間にとらわれない人と人との結びつきが可能になったこと指しているようだ。ウェブ上に構築されたあちら側の世界はそれだけでは成り立たず、人と人がウェブを経由して結びつかなければ何も起きない。例として、ウェブによって可能となった料理人のシェアやキックスターターなどのビジネス事例を紹介している。どちらもウェブという仕組みをハブとして人々を結びつけることでビジネスが成り立っている。今後は、ウェブにより実現されるシェアやマッチングをいかに活用し現実世界と結びつけるかが重要になるだろう。

 この書籍はICT業界の最新事情も含めた現在までの流れを捉え直すために参考になりそうだ。なんといっても、著者はインターネットの黎明期からジャーナリスト的に活動されてきた人物であるだけに、この本を読めば業界の最新事情を広く知ることができるのだ。この本に掲載される中では、グーグルがロボティクスやAIだけでなく量子コンピュータの開発に投資をしているという記載がおそらく最も新しい情報だろうと思う。内容が新鮮なうちにサラリと読むことをオススメする一冊である。

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会計とは何かがよく解るおもしろ小説 『会計天国』 竹内謙礼、青木寿幸、共著

会計天国 (PHP文庫)

副題:今度こそ最後まで読める、会社で使える会計ノウハウ

 読書の目的は人それぞれでありまたその時によって異なるものです。例えば心が乾いた時は小説を読むがいいし、何か新しいことをしようとするときはハウツー本などがいい。でも、両方楽しめないか?と考える欲張りな人がいたりします。かくいう私もその一人なのかもしれません。

 最初私はこの本のタイトルから、会計の知識を使って、ウハウハ状態になるほど金儲けをしたという、言って見れば「会計ヘブン」的な話か、と思っていました。表紙に現れている男の影が、なんとなく世渡り上手の成功者に見えたのです。法律ギリギリの手練手管でがっぽり金儲けをする話、というそんなイメージでした。
 読んでみたところ少し違いました。実際に主人公は会計コンサルでポルシェを乗り回しているという設定なので、近いことは近い。しかし、天国の意味は運に恵まれた成功者ではなく、ポルシェに乗って事故を起こして、天国に行くという話なのでした。
 主人公は、天国で天使に遭遇して、難題をふっかけられます。その難題というのが、経営で困っている5人を、主人公が現生の誰かに乗り移って、経営の手助けをするという話でした。
 経営の手助けをする時に、必ず会計コンサルタント的な手法を使うわけです。そこで、ストーリーの中に会計の話がふんだんに登場するという、かなり無理な設定ではあります。しかし、設定をハチャメチャにすることで小説としては読みやすくなっていると思います。もし、ありきたりの設定の中で会計の話が出てきても、その時点で小説を読もうという気力が萎えそうですからね。

 私も簿記の勉強をしているので多少の肥やしになるかと思っていました。しかし、簿記の知識という意味では得られるものはあまりないかもしれません。むしろ、会計つまり、損益計算書や貸借対照表、あるいはキャッシュフローの読み方が身につくと思います。簿記学がこれらの帳票を作成するための知識だとすると、この本はその原理を知った上で、帳票を読みながらいかに経営的判断をするかというノウハウをみにつけるためのものであると言えます。
 つまり、簿記の意味合いというか、なぜBSやPLのフォーマットが現在の形になっているかを知るためには良い本。そのため簿記会計の知識がないと、読むには少々辛いかもしれません。

 正直にいうと、この本は知識を習得するために、真剣に読む本ではないですね。もしそう言った所望があるなら、以前紹介した「会計の基本」や「管理会計の基本」をお勧めいたします。

 最後に、『会計天国』は実は小説としてそこそこ良く出来ていると思います。最後まで読むと、それなりによくできた小説であることの感慨にふけることができる、かもしれません。

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日本のアフリカ外交におけるイノベーションの指針となるもの 『リバース・イノベーション』 ビジャイ・ゴビンダラジャン著

リバース・イノベーション

 1月9日から安倍首相がアフリカを訪問している。日本のインフラシステムをパッケージで輸出するのが目的のようだが、果たしてうまく行くのだろうか。
 アフリカから見たときの、日本のプレゼンスがどの程度であるかは重要だろう。十年一昔というだけあって、15年前にアフリカ進出を開始した中国はその存在感をかなり大きくしている。特に、家電製品は以前日本製品が主流だったようだが、最近は中国製品が多いと聞く。自動車ではトヨタが善戦しているものの、韓国の現代自動車が主流になりつつあるようだ。
 なぜアフリカでは日本製品が歓迎されないようになったのか。たしかに、日本政府がこれまでの間に外交努力を怠ってきたというのもあるだろう。言ってみれば、政府の進出と企業の海外進出がちぐはぐになっているのが問題だと思う。いまは企業は中国への進出を果たしているが、結局政治レベルでは日中関係は冷え切っている。今回の政府レベルでのアフリカ外交は結構なことではあるが、企業にとって既に中韓に明け渡した市場を取り戻すのは相当に困難を伴うと思う。

 しかし、もし中国市場への展開からアフリカへの企業展開を目指すとするなら、日本は従来のやり方を捨てて、新たなイノベーションを模索しなければならない。まさにこの本には、過去に日本製品をアフリカに展開した従来のやり方「グローカリゼーション」は、今は通用しないということが書いてあるのだ。

 この本のタイトルでもある、『リバース・イノベーション』とは、貧困国でイノベーションが創生され、それが富裕国に展開されるという、従来とは逆の流れによるイノベーションの展開をさして言う。
 ではなぜイノベーションの逆流現象が起こるのだろうか。そのことを、この本では富裕国と貧困国との経済状況の決定的な違いから説明を開始している。

13ページ
 国際通貨基金(IMF)はさまざまな経済指標について、国ごとのランキングを定期的に発表している。たとえば、人口では中国が1位、インドが2位である。世界人口の実に85%に当たる58億人が貧困国で暮らしている。国内総生産(GDP)では中国が2位、インドが4位で貧困国のGDPのほぼ半分、約35兆ドルである。
…(中略)…
 IMFの2010年の公表データによると、中国94位(ボスニア・ヘルツェゴビナとエルサルバドルの間)、インドは128位(カーボ・ヴェルデとベトナムの間)である。[一人あたりGDPの説明:ブログ筆者注記]
 要するに言いたいことは簡単で、途上国は富裕国とは異なっている、ということだ。それもほんの少しの違いではなく、天と地ほども違うのである。富裕国には、毎日大金を費やす人々がごく少数いる。途上国には、毎日少額を費やす人々が大勢いる。どちらも支出総額は膨大だ。中国とインドはマイクロ消費者のいるメガ市場なのである。

 この本で著者は、発展途上国の市場が求めているのは、そこそこの機能と品質と、圧倒的な低価格である、というのだ。確かに、どれだけニーズがあったとしても、価格の高い製品では収入が富裕国の10分の1しかない人々の手には届かない。
 その顕著な例として、インドで販売されている新しい冷蔵庫の話が登場する。

61ページ
 だが、現実はもっと複雑である。食品の保存をめぐって解決すべき問題の背景は、貧困国ではまるで異なっている。第一に、貧困国とりはけ農村地帯では、電力供給が当てにならないので、高品質でも断熱性に欠ける冷蔵庫はほとんど使えない。第二に、消費者には経済的余裕がないので、安価であれば性能が低くてもかまわないと思っている。
 いま市場に出回っている新技術は、こうした要望をすべて満たしている。ムンバイのゴドレジ・アンド・ボイスが開発した〈チョットクール〉冷蔵庫の価格は、わずか69ドルだ。断熱性に優れており、一時的に電池で冷やすことができる。おまけに部品点数が少なく、軽量で頑丈だ。

 ヒンドゥー語の「チョット」は「少し」を意味する。一見日本の製品名と思ってしまうかもしれないが、これはインドでの販売製品名だ。この本には、〈チョットクール〉のようなリバース・イノベーションの事例が多数紹介されている。
 本の構成は大きく2つに分かれていて、第1章ではリーバース・イノベーション実現の方法について述べている。そして第2章では、リーバース・イノベーションの実際を、8つの事例でもって紹介している。家電製品だけではなく、医療や食品にもリバース・イノベーションが適用されている。つまり、技術が適用される製品ならば、あらゆるものに適用可能ということらしい。リバース・イノベーションは手法と言うよりは、時代の流れに即した、ひとつの現象と言えるのかもしれない。

 再びアフリカの話に戻る。アフリカでは、味の素が売れているという。もちろん味の素社の製品ではなく、「味の素」そのものである。もともと、「味の素」は日本の戦後復興期に生まれ、当時のどこの家庭にもあった。しかし、いまは日本の食卓に味の素の瓶を見出すことは難しい。世界各国の調味料が家庭の厨房に並んでいる現代では、むしろ万能調味料は使い道がないのかもしれない。
 逆に、貧困国のBOP(Bottom of Pyramid)の人々にとっては、この万能の調味料のニーズは高いだろう。どの国にであろうと、料理はより美味しく食べたいものなのだ。味の素社は貧困国に対して「味の素」を積極的に展開しているという。自らの商品の特性を生かした素晴らしい戦略といえるだろう。

 つまり、古くから存在し現在でも使われている製品についてはリバース・イノベーションを適用することは難しい。それは既に枯れた商品であり、技術的に改変を加えることは難しいからだ。この本に登場する多くの事例は、富裕国で成熟した製品でありながら、BOPでは価格的に手にすることができない製品である。富裕国の製品を少しだけローカライズしても、彼らはそういった押し付けられた製品を買おうとしないし買えないのだ。

 どのリバース・イノベーションの事例を見ても、その国の人々の手により製品が開発されている。彼らは諸外国から、魚と釣竿を提示された時、釣竿を選んでいるのだ。果たして日本のアフリカ外交は釣竿を提示しているのだろうか。日本はアフリカに対して自立を促す経済支援をしなければ、中国外交の後塵を舐めるだけになるのではないか。
 日本はリバース・イノベーションという現状を知った上で、新しいアフリカとの関係性を模索しなければならない。なぜなら途上国への外交の目的は、未来の互恵関係を見据えたものに他ならないからである。

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2013年読んだ本ピックアップ

あけましておめでとうございます。
今年も年頭に、昨年読んだ本のなかで面白ためになった本をピックアップします。
読んだ本の冊数が今年は少なく、合計58冊でした。カッコ内は一昨年の数字です。

◆心のビタミン 11冊(43)
 1.小説     7冊(36)
 2.エッセイ     4冊(7)
◆思考の炭水化物 28冊(24)
 3.ビジネス     14冊(8)
 4.自己研鑽     14冊(16)
◆知識のタンパク質 19冊(36)
 5.歴史と未来・科学     13冊(26)
 6.ノンフィクション     6冊(10)

今年は以下の本をピックアップしました。ブログ記事で紹介していない本もありますが、機会があれば再読して紹介したいと思います。

1.小説

『百年法』 山田宗樹著
日本の少子高齢化をモチーフにしたディストピア小説。
もし人類が永遠の生を得たらどうなるか?
そういえば最近「長生きをしたい」というのをあまり聞かなくなった。

2.エッセイ

『第2図書館補佐』 又吉直樹著
コメディアンが書く本なんて…、と思うなかれ。
又吉さんの日常のなかに潜むウィットに富んだエッセイ。

3.ビジネス

『企業が「帝国化」する』 松井博著
アップルやグーグルといった無国籍企業は何を支配しているか。というよりも、それ自体がひとつの国家に近いという話。

4.自己研鑚

『知の逆転』 ジャレド・ダイアモンド他
何度でも読みの直したくなる本。この本から読むべき本をたどる事ができる。

5.歴史と未来

『日本はなぜ開戦に踏み切ったか』 森山優著
なぜ太平洋戦争という無謀な戦争に至ったか。いったい誰がそれを決断したのかが判る。
実際には誰も決断を下していなかったのだった。

6.ノンフィクション

『カウントダウン・メルトダウン』 船橋洋一著
今年最も面白かった本。311で起きた原発事故。その対応に追われた現場はほぼ戦争状態だ。なぜ日本はアメリカの支援を一度断ったのか。なぜSPEEDIが動かなかったか。疑問に思っていたことのほとんどがこの本で解決する。

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日本の現状を憂う企業人かく語りき 『現実を視よ』 柳井正著

現実を視よ

 前回の参議院選挙で民衆の耳目を集めた二人が当選した。渡邉美樹、そして、山本太郎。一人は元起業家、そして、一人は元俳優。これが何を意味するか。何も意味しないのか。
 私はこの選挙結果の背景には民衆の政治不信があるのだと思う。政治不信というよりも体制に対する不信だろうか。年金問題、少子高齢化、格差と貧困、インフラ老朽化、財政債権、原発問題。あらゆるものが日本を疲弊に導いているのに、体制側は抜本的な解決策を何も示していないのだ。

〓 体制にとっての不都合を排除する日本

 そしてこの体制側の問題を改善しようとする政治家はことごとく潰されてきた。記者クラブ制度を廃止しようとした小沢氏を筆頭に、警察権力の不正を正そうとした鉢呂氏、東電の問題を追求しようとした菅直人氏、そして今は脱原発を訴える山本太郎氏が標的になっている。

「これから先も多分、ネガティブキャンペーンの先頭を走るのが週刊新潮だと思うんですよね」山本太郎議員8/6記者会見(動画&内容全て文字起こし)

 いまや民衆の側に立って、政財官検メディアの5つの権力に立ち向かっているのは山本太郎氏くらいだろう。しかし山本氏への風あたりは強い。体制側が彼を孤立化させるためにいろいろな策を打っているのがこの記者会見からもあからさまに判る。本来であれば、メディアはこの不公正を正すべきなのだが、体制の側にいるメディアはそれをしないのだ。

〓 ブラック企業と呼ばれた対応の違い

 一方で渡邉氏も選挙前にはブラック企業の代表のように言われ苦戦を強いられた。しかし当選してからは特に大きな混乱はないようだ。この扱いの違いは渡邉氏が自民党公認であり体制の側に近いからなのか。これでしばらくは安泰なのだろうか。

 ブラック企業といえば、かつてユニクロもブラック企業と揶揄されていた。しかし、ユニクロの対応はワタミとは違うものだった。ユニクロの柳井会長は日経ビジネスのインタビューに直接応じて、ブラック企業と呼ばれた理由を分析し、そうではないと理路整然と反論している。
 一方で、ワタミも同様のインタビューを受けたが、「離職率は高くない」「昨年より改善している」など、状況説明に終始したようだ。
 現実を直視して、会社のポリシーに従えばブラック企業と呼ばれてもやむなしとするユニクロと、ブラック企業と呼ばれないために離職率を下げる対策に打って出るワタミと、果たしてどちらが魅力的な企業と言えるのだろうか。

ユニクロ:甘やかして、世界で勝てるのか
ワタミ:「我々の離職率は高くない」

 ところで、渡邉美樹、山本太郎、柳井正、この三名に共通するものは何だろう。三人に共通するのは、体制の外側に居て体制を変えようとしていることだ。村社会化した日本の体制を内側から変えるのはほとんど不可能だろう。だからこの三人が国家を良い方向に導く可能性に、大いに期待できると思う。

〓 現実を観なければ、世の中を良くすることはできない

 柳井氏は現役の企業人であるから、国政に対する批判を表立ってすることはない。しかし、現状の日本に対する忸怩たる思いがあったのか、昨年PHPから『現実を視よ』という本を出版した。

 この書籍で柳井氏は、冒頭で日本の危機的状況について説明する。そして自社のグローバル戦略の説明がある。しかし、普通のビジネス書を装っているのは第2章までだ。第3章のタイトルは「政治家が国を滅ぼす日」である。ここから先は日本の体制側つまり政官財マスコミの問題点を鋭く指摘する。私はこれを読んで、溜飲が下がる思いがした。少し章立てをピックアップしてみよう。
 ・常軌を逸した「国土強靭化基本法案」──137ページ
 ・「消えた年金問題」は国家犯罪──139ページ
 ・原発事故の責任は「日本文化」にあらず──144ページ
 ・政治家よ、国民のサーバントたれ──165ページ
 ・自分の意見を言わない官僚たち──168ページ

〓 現実を観なかった「国土強靭化法案」

 特に「国土強靭化法案」に対しては柳井氏の酷評が激しい。この法案は自民党が政権を奪還するときに目玉として投入した政策であった。そして、当時この法案に対して異を唱える人は少なかった。この法案の元となった「列島強靭化論」を作ったのは京大教授の藤井氏である。その「列島強靭化論」を扱ったこのブログの過去記事に、気迫がこもったメントが寄せられた。ほとんどのコメントは同じFacebookのリンク元から寄せれらている。つまり、組織的にネット上の反対意見を潰しているようなのだ。
 国の借金が一千億に達したという。10年間で200兆円という先に借金ありきの国土強靭化法案はこうなると分が悪い。それにしてもこうなることを解っていながら、発足当初になぜ反対の声が少なかったのか不思議だ。そこには記者クラブの存在があったのかもしれない。当然、柳井氏は記者クラブに対しても否定的だ。

〓 過去の日本とグローバルな視点

 柳井氏は過去の日本についても否定的だ。グローバルに店舗を展開するために各国の状況をつぶさに見た柳井氏だ。比較対象を知っての上だから日本のアラが見えるのだろう。この本の冒頭近くでは以下のように述べている。

80ページ
 不朽の名著『失敗の本質』をものした野中郁次郎氏にお目にかかったとき、太平洋戦争の敗戦も、バブル期以降の日本の衰退も、その本質は似ている、という話をされた。目の前にある現実を視ないで、過去の成功体験にとらわれて変化を嫌う。理論よりも情緒を優先し、観念論に走るといった特性は、時に取り返しのつかない結果を招く。
 軍部の指導者が犯した最も許しがたい「失敗」は、若者に特攻を命じたことである。もはや日本の敗戦は明らかだった戦争末期まで、それは続けられた。肉弾をもってすれば、米軍の圧倒的な物量に抗せる、彼我の技術力の差を覆すことができるといった、まさに現実を直視しない根拠の無い観念論で、あたら有為の若者を大勢死なせてしまったのである。
 しかも、司令官、指揮官クラスのエリートは「自分もあとから行く」と言っておきながら、敗戦が決まると責任をとることもないまま、今度は日本復興のために尽力する、と180度、態度を変えた。全員がそうだったのわけではないが、特攻については黙して語らずとう態度をとった者が多かった。
 もちろん、国難にあたって自らの命をささげた若者たちの純真さには、胸を打たれる。彼らのことを日本人は永遠に忘れてはならない。しかし、特攻という「統率の外道」をあえて命じておきながら、責任をとらなかったかつての陸海軍の司令官、指揮官たちの卑劣さは許しがたい。
 こうした無責任さを日本人特有の悪弊として考えたくは無いが、発言をコロコロ変えて平然としている現代の政治家たちの姿を見ていると、太平洋戦争の「失敗」に何も学んでいないのではないかと言いたくなる。

 今や日本は危機的な状況であることは確かだ。一部の政治家の中にはそれを隣国のせいにしたり、その解決策に精神論やら軍事力などを持ち出す者までいる。そんな連中に政治を任せておけば、いずれ日本は戦前のダメ日本に逆戻りだ。
 日本はこの国の現実を直視し、おかしいことはおかしいと市民が言えるようにならないといけない。親方日の丸から脱しなければ、やがてそのツケはどんどん次世代へと先送りになるばかりだ。そうなららないために自分に何ができるのか。そう深く考えさせられる一冊であった。

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海外から見た日本の非民主性 『「本当のことを」を伝えない日本の新聞』 マーティン・ファクラー著

「本当のこと」を伝えない日本の新聞 (双葉新書)

 311をきっかけとして日本のジャーナリズムが問われた。しかし私達はまだその答えを出していない。いや、出せないのかもしれない。なぜならここは日本であり我々がに日本人だからなのだろうか。

 この本は、ニューヨーク・タイムズ東京支局長が書いている。どうやら日本のジャーナリズムは海外から見ると異質であるらしい。特に、記者クラブという日本独特の制度はほかに類がないという。

53ページ
 お隣の韓国にも、最近まで日本とよく似た記者クラブ制度が存在した。だがインターネットメディアと既存メディアの間で軋轢が表面化した結果、2003年、盧武鉉大統領が記者クラブ制度を廃止している。世界でも稀に見るこの組織は、英語圏では「Kishaclub」「kisha kurabu」と呼ばれる。あまりにも特異すぎて、翻訳語が存在しないのだ。

 日本の新聞に偏向報道が多いのは過去311で既に多くの国民が経験済みである。にもかかわらず、記者クラブは批判を浴びないし、原発報道に関してはまるで原発事故がなかったことのように、原発再稼働を当然のこととして報道する新聞社が多い。つまり、日本は相変わらず偏向報道がまかり通っているわけだ。1941年に大本営発表がなされて以来、この姿勢は日本国の内底に脈々と流れているようである。

 しかし、日本のジャーナリズムが民主主義国として大きく立ち遅れているのは国民の意識にも問題があるからだといえる。そのことを著者は次のように簡潔にまとめている。

143ページ
 もしアメリカで、公権力の不正を新聞が徹底的に追求すれば何が起きるだろう。記事を読んだ市民が間違いなく怒り出す。有権者の怒りに対し、彼らに選ばれた立場の州知事は敏感だ。報道が正しいと判断すれば、州知事は組織のトップや幹部を総入れ替えするだろう。民主主義とは本来、そういうことだ。
 誰かがインチキを働いていれば、メディアが厳しく追求する。メディアの報道が当局を動かし、インチキを働くものを厳しく処分させる。読者はメディア報道を支持し、不正を撤廃する為政者を支える。
 新聞が正しいジャーナリズムを追求し、市民が応援するならば、当局の組織を根本的に変えることだってできる。当局から不当で陰湿な嫌がらせを受けたとしても、新聞社が頭を下げるようなことがあってはならない。何が正しく何が間違っているのかを、逆さまに履き違えてはならないのだ。

 昨日来話題になっている復興庁幹部のTwitter暴言に関しても、新聞はその言葉尻しか捉えていないように思う。海外のメディアであれば、どのような理由で述べた発言なのかを本人にインタビューをするだろう。これは、かつての鉢呂氏の報道と同じ状況だ。残念ながら、日本人は真実の探求に疎いのではないだろうか。

 横並びの新聞紙面に疑問を感じる。または日本のジャーナリズムが変だと感じる方はぜひこの本を読んでほしいと思う。

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